研究課題/領域番号 |
21K19671
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
遠藤 整 東海大学, 医学部, 准教授 (10550551)
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研究分担者 |
大和田 賢 東海大学, 医学部, 講師 (40756409)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | がん転移 / 酸化ストレス応答 / がん幹細胞 / がん細胞 / 転移 |
研究開始時の研究の概要 |
がんを克服する上で最大の障壁は転移であり、転移に関わる多様な分子メカニズムの解明はがんの進展予防において喫緊の課題である。本研究では、がんの進展過程で必然的に生じる「低酸素、低栄養、足場喪失」といった過酷な環境ストレスが、がん細胞から分泌される物質の変容を引き起こすこと、さらには、変容した分泌性物質が、転移促進と臓器特異性に関与することを証明していきたい。本研究の遂行によって、『がん細胞のコミュニケーションツールを阻害する新規の転移予防戦略』 が可能となる。加えて、転移臓器の予測や治療経過を評価する二次予防への応用、および術後の再発管理などに貢献出来るバイオマーカーの確立を目指したい。
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研究実績の概要 |
がんによる死亡原因の90%程度に転移が伴っていると推測され、死亡率の低下を目指す上に置いて、転移を制御している分子メカニズムの解明は喫緊の課題の一つである。本研究では、がんの進展過程においてがん細胞自身が必ず経験する環境ストレス「低酸素、低栄養、足場喪失」といった要因が、がん細胞の性質の変容を引き起こすことや転移促進に関与することの証明にチャレンジするものである。 本年度は、非接着環境下で認められるがん細胞の表現型に焦点を当て、特に酸化ストレスへの適応、薬剤耐性の獲得、スフェロイドの形成を説明しうる分子メカニズムの検討を行った。 用いた全てのがん細胞は、非接着培養条件により様々な形のスフェロイドを形成し、5FUなどの抗がん剤に対し著しく抵抗性を示したことから、抗がん剤への薬剤感受性は低下することが分かった。昨年度実施した脾臓移植による転移能の亢進を検討したin vivoの結果より、非接着条件下においてがん幹細胞マーカーの発現変動が推測されたため、CD13, CD133, EpCAMを代表とする肝臓がんのがん幹細胞マーカーの発現について検討した。その結果、これまでの先行研究とは異なる、非接着条件下でのみ認められるがん幹細胞マーカーの特異的な発現変化が分かった。その条件下での細胞特性をより明確にするため、4つの肝がん細胞株を用いて、非接着条件でのみ変動する遺伝子発現を網羅的に検討した。発現が上昇した共通の遺伝子数は8つ、発現が低下した共通の遺伝子数は21個であり、共通遺伝子は予想を超えて絞り込むことが出来た。発現が上昇した遺伝子のうち機能不明の遺伝子を除くと、全てが酸化ストレス応答に関わる遺伝子であった。ある転写因子のノックダウンによる検討から、非接着条件下で機能するであろう最も重要な遺伝子を特定することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに知られていたがん幹細胞マーカーの発現とは全く異なる発現パターンについて有用な情報を取得することが出来た。これまでは、同じ臓器由来のがんであったとしても、がん幹細胞マーカーの発現には一貫性はあまりなく、がん細胞の生存環境に着目した報告はほとんど無かった。本研究では、転移に向かう環境の一部を再現した非接着条件でのみ認められる共通のがん幹細胞マーカーに迫ることが出来たため、転移のがん細胞特性をさらに理解する上で重要な知見の1つを見出すことが出来たと考えられる。さらに、複数の細胞における共通性を見出すための実験を積み重ねたことから、普遍性の高い結果を得ることが出来た。昨年度に引き続き、転移モデルの確立やがん幹細胞マーカーに焦点を当て、酸化ストレス応答が転移を支える共通メカニズムであることを解明できたため、順調に研究を遂行できたものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化ストレス応答ががん細胞が転移を成立させるための必要条件であることが示唆されたものの、十分な分子メカニズムに迫ることが出来たとはいえなかった。そのため、遺伝子の強制発現やノックダウン又はノックアウトなどの実験を積み重ねることが必要になってくる。がんの特徴の一つである転移は、由来臓器に依存しない共通の表現型である。それゆえ、異なる細胞腫を用いたとしても、転移を支えるメカニズムには共通点があるものと推測している。本研究で用いた細胞のみならず、異なる癌腫を用いることで、本研究で得られた知見がどの程度当てはめることが出来るかなど、幅広い視点で検討を重ねていく必要があると考えている。
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