研究課題/領域番号 |
21K19684
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
武田 志乃 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, 上席研究員 (00272203)
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研究分担者 |
田中 泉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, 主任研究員 (10270612)
藤代 瞳 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (10389182)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 量子ビーム / 腎臓 / ウラン / 重金属 / 分布 / 内部被ばく / 化学状態分析 / 近位尿細管 / イメージング / 放射光 |
研究開始時の研究の概要 |
腎臓における核種動態は、内部被ばく核種の体内残存に大きく寄与することから、腎臓の元素取り込み・排泄機序を明らかにしていく必要がある。体内で代謝された内部被ばく核種の尿からの再吸収の要となる腎臓近位尿細管は、上流からS1、S2、S3の3領域に分かれており、領域特有の物質輸送システムを有する。本研究では、量子ビームサイエンスによる生体内元素分布・化学状態研究と動物実験および近位尿細管領域由来培養細胞を用いた元素動態研究を融合させることにより、内部被ばく核種の腎臓内動態の特性解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
腎臓における核種動態は、内部被ばく核種の体内残存に大きく寄与することから、腎臓の元素取り込み・排泄機序を明らかにしていく必要がある。体内で代謝された内部被ばく核種の尿からの再吸収の要となる腎臓近位尿細管は、上流からS1、S2、S3の3領域に分かれており、領域特有の物質輸送システムを有する。本研究では、量子ビームサイエンスによる生体内元素分布・化学状態研究と動物実験および近位尿細管領域由来培養細胞を用いた元素動態研究を融合させることにより、内部被ばく核種の腎臓内動態の特性解明に取り組む。尿中排泄量や腎臓取り込みのバルク量として評価してきた従来の内部被ばく核種動態研究、臓器内均一分布と想定した内部被ばく線量・リスク評価体系に対し、尿細管の領域特異性の視点を導入した新たな動態研究、不均一分布を考慮した線量・リスク評価体系の創出を目指す。 具体的には、動物および尿細管領域由来培養細胞に対するばく露実験を行い、近位尿細管のS1、S2、S3それぞれの領域への分布・局在様態や元素の取り込み効率の違い、感受性や輸送、蓄積性の領域特性を把握する。尿細管領域由来培養細胞実験から得られた元素輸送系分子機構を動物実験と対応させ、腎臓内動態の元素特異性を示す。令和4年度は尿細管侵襲重金属(カドミウム、プラチナ、ウラン)のばく露後初期モデルについて、SR-XRF(シンクロトロン放射光蛍光X線分析)やマイクロPIXE(荷電粒子励起X線)分析を用いて腎臓内および近位尿細管内元素分布解析を行った。腎臓あるいは尿細管組織構造と元素イメージングを対応させた結果、重金属分布様態の元素特異性が観察された。またS1、S2、S3領域に対応するそれぞれの尿細管領域由来培養細胞を用いて、ウランばく露後のウランおよび内因性元素の細胞内分布動態を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に、放射光やプロトンなどのマイクロビームを用いた元素イメージングの測定条件を設定しており、これに基づき令和4年度は細管侵襲重金属ばく露の動物腎臓および近位尿細管領域由来培養細胞の分布解析を進めた。それぞれ1回投与の腎毒性発現モデルに対し、ばく露後初期(1-6 h)の明確な組織損傷を生じる前の観察時間における元素分布動態を構築した。 1)腎臓内元素分布解析:カドミウムあるいはプラチナ(シスプラチン)をばく露したマウス腎臓について、SR-XRFによりカドミウムおよびプラチナのイメージングを取得した。測定試料の隣接切片をPAS染色して、近位尿細管の領域区分を把握し、元素分布を対応させた。カドミウムは近位尿細管の上流領域を主体に分布していたが、下流領域にも移行し、尿細管上皮に取り込まれていることが確認された。一方プラチナは、明確な部位特異的局在は観察されなかった。マイクロPIXEでは、重金属ばく露後のリン・カリウム濃集部の形成を調べた。ウランやカドミウムとは異なり、プラチナでは明確なリン・カリウム濃集部が確認されなかった。さらに経時変化についてのデータを構築し、元素による違いを明確にする必要がある。 2)尿細管領域由来培養細胞:ウランばく露モデルについては、S1、S2、S3細胞それぞれについてばく露後1-24時間におけるウラン取り込み量を調べた。また付着細胞試料についてウランイメージングを行い、ばく露後短時間でウラン濃集部が形成されていることを確認した。プラチナ(シスプラチン)に対するシングルセル(一細胞)イメージングを進めた。ばく露後初期での付着細胞タイプの解析では、プラチナの細胞内での濃集・沈着は生じておらず、均一的な分布を呈した。細胞内取り込みの有無を確認するため、細胞薄切タイプの試料を用いて表面沈着の有無を調べる必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで腎臓内分布や細胞内動態について、尿細管侵襲重金属(カドミウム、プラチナ、ウラン)の元素特異的な傾向を把握してきた。今年度は不足しているデータの補充に焦点をあてる。組織および細胞内元素分布動態について、再現性を検証すると共に、経時変化についてのデータを補充し、明確な元素特異性の提示につなげる。 1)腎臓内元素分布解析:ばく露初期以降から毒性発現までの過程について、分布動態データの補充を行う。ウラン、カドミウム、プラチナの領域特異性を比較する。リン・カリウム濃集の形成については、SR-XRFによるばく露元素の分布動態をからウラン、カドミウム、プラチナの局在部周辺を抽出し、詳細な領域のPIXE解析から濃集部形成有無を判定する。 2)細胞内元素分布解析:シングルセルイメージングの経時データの構築を行う。特に不足している、ばく露後十数分から1時間までの元素分布動態解析を重点的に行う。 3)濃集関連因子の発現解析:毒性指標や金属トランスポーター、ミネラリゼーションなど濃集関連の候補因子について、尿細管領域由来培養細胞を用いて発現変動を調べる。関連因子を特定したら、動物実験に外挿し、腎臓のウラン、カドミウム、プラチナ動態との関係を明らかにする。
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