研究課題/領域番号 |
21K19703
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
狩野 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90293133)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 酸素ダイナミクス / ミトコンドリア / カルシウムイオン / 骨格筋 / 毛細血管 / 間質 / 筋細胞 / 筋収縮 / 酸素分圧 |
研究開始時の研究の概要 |
酸素をエネルギー代謝に利用する生体システムに関する研究は,運動生理学の中心的な研究課題となっている.酸素運搬に関しては,呼気ガスと血液中の生体情報から評価することが一般的であり,毛細血管から細胞質内までの酸素運搬の定量的な評価は成功事例がない.その理由は,血管内 →間質→細胞質内の3ステップでの酸素の時空間的な動態(酸素ダイナミクス)を評価する研究モデルが存在しないためである.本研究では,3ステップでの酸素ダイナミクスを同時に評価する測定技術を開発することによって,各々のステップでの酸素ダイナミクスを規定するシステムの解明に挑戦する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,骨格筋組織内での酸素の時空間的な動態(酸素ダイナミクス)を解明することであった.筋組織内では微小血管網の毛細血管から細胞間質へ酸素が拡散し, 細胞内に取り込まれ,最終的にミトコンドリアの酸化的な代謝に酸素が利用される.本研究は,筋収縮活動中の(1)血管内→(2)間質→ (3)細胞内の3ステップでの酸素ダイナミクスを評価することによって,各々のステップでの酸素ダイナミクスを制御する生体システムの解明を目標に設定した. これまで,マウスを対象として血管内(ステップ1)と間質内(ステップ2)の酸素ダイナミクスの同時計測モデルを構築した.細胞内の酸素ダイナミクスについては,ミトコンドリアのカルシウムイオンに着目した.ミトコンドリア内のカルシウムイオンは,TCAサイクルの酵素活性を制御することから,酸素ダイナミクスの中心的 な役割が考えられる.これまでのところミトコンドリアマトリクスにおけるカルシウムイオン感受性蛍光タンパク質の発現モデルをマウス骨格筋で作成し,in vivoカルシウムイメージングによる筋収縮のカルシウムイオン過渡応答の評価に成功した.これらの実験モデルより,電気刺激開始時にミトコンドリアのカルシウムイオンは即時的に増加することが明らかになった.一方,間質中の酸素分圧動態は電気刺激の開始より 10 秒程度の応答時間の遅延が観察された.これらの結果は,筋収縮時には筋細胞内の酸素を利用した代謝が主体的であることを示唆している. 本研究は,マウス in vivo環境において,ミトコンドリアカルシウムイオン動態と細胞間質における酸素動態を同時に観察するモデルの構築に成功し,それぞれの動態特性を明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,細胞内の酸素ダイナミクスを制御するミトコンドリアに着目した.実験モデルとして,マウスの前脛骨筋に,ミトコンドリアマトリクス内カルシウム感受性蛍光タンパク質(4mtD3cpV)のベクターを注入し,エレクトロポレーションにより,筋組織内に導入しミトコンドリアマトリクス内の発現モデルを構築した.このモデルが安定的に作成できたことから,筋収縮時のカルシウムイオンダイナミクスを評価した.その結果,収縮直後に即時的にカルシウムイオン濃度が有意に増加し,刺激終了時では,開始時と同レベルまでミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が低下する動態を観察した.収縮と同期したミトコンドリア内へのカルシウムイオンの取込み速度は,ATP合成の最大化に寄与している可能性があり,酸素ダイナミクスと筋収縮との連関を示唆する知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,筋収縮活動中の(1)血管内→(2)間質→ (3)細胞内の3ステップでの酸素ダイナミ クスを評価することによって,各々のステップでの酸素ダイナミクスを制御する生体システムの解明することを目的とした.筋細胞質内の酸素動態を評価する方法が確立できていないため,本研究では,ミトコンドリアのカルシウムイオン取込に着目した.この実験系を確立することに成功した一方,血管内の酸素動態を評価する酸素クエンチング法とミトコンドリアカルシウムイオンの観察に必要な蛍光波長が干渉することが確認され,同時計測ができなかった.今後は,(1)血管内→(2)間質→ (3)細胞内の酸素動態を同時に評価できる測定法の開発に継続して挑戦する必要がある.
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