研究課題/領域番号 |
21K19732
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
若尾 宏 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10280950)
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研究分担者 |
杉本 智恵 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (60469955)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | MAIT細胞 / 喘息 / 気道炎症 / 2型自然リンパ球(ILC2) / アレルギー / 新規マウスモデル / Thサイトカイン / PAS染色 / BALF / アルテルナリア / 2型自然リンパ球 / 免疫能低下 / 自然免疫型T細胞 / 加齢 / 生体防御能 |
研究開始時の研究の概要 |
個体の免疫は自然免疫と適応免疫によって担われているが、自然免疫型T細胞はこれら免疫の橋渡しを行う。自然免疫型T細胞が加齢に伴う免疫能低下で果たす役割はこれまで不明であった。本研究はヒト最多の自然免疫型T細胞であるMAIT細胞の量・質の低下が加齢に伴う個体免疫能低下の原因であると仮定し、これを証明する実験を新たなマウスモデルを用いて行う。 これらの研究を通してMAIT細胞の量・質の低下の機序を明らかにして、加齢に伴う免疫能低下の防止・抑制法を開発する。
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研究実績の概要 |
MAIT細胞は自然免疫と適応免疫細胞の両方の性質を持ち、自然免疫と適応免疫とを橋渡しする。この性質からMAIT細胞は喘息などのアレルギー性気道炎症に関与することが予想された。我々はこれまでマウスMAIT細胞より樹立したiPS細胞からキメラマウスを経由してMAIT細胞の豊富なマウスを作製した。昨年度、これを用いてMAIT細胞がかびの一種であるアルレリナリア刺激による気道炎症を抑制することを示した。今年度はその機序解明を行った。 MAIT細胞がILC2の増殖、ならびにILC2からのサイトカイン産生を抑制するのか否かを明らかにするため、野生型マウス肺からILC2を単離・精製し、IL-33で刺激を行ってその増殖とサイトカイン産生を促した。一方、MAIT細胞の豊富なVα19マウスからMAIT細胞を精製し、刺激なし・IL-12/IL-15/IL-18で刺激・アゴニストで刺激、の3通り用意し、IL-33で刺激したILC2と共培養した。その結果、IL-12/IL-15/IL-18で刺激したMAIT細胞が、IL-33刺激によるILC2の増殖とILC2からの2型・炎症性サイトカイン産生を阻害することを明らかにし、そのエフェクター分子としてインターフェロンγを同定した。さらにこのMAIT細胞の抑制能がin vivoでも見られるのかを明らかにするため、免疫細胞を欠如する高度免疫不全(NOG)マウスにIL C2単独で養子移入、ILC2+MAIT細胞を養子移入し、気道炎症を誘導した。その結果、MAIT細胞が存在するとILC2単独の場合に比して炎症が軽減された。この炎症軽減は肺胞洗浄液中の2型・炎症性サイトカイン産生の低減、肺ILC2数の低下、肺組織のムチン産生現象によって確認できた。また、そのエフェクター分子としてインターフェロンγの可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では獨協医大で開発した、マウスMAIT細胞由来iPS細胞から樹立した遺伝的にMAIT細胞が豊富なVα19マウスを用いて、喘息モデルにおけるMAIT細胞の機能解析を行った。これまで喘息におけるMAIT細胞の機能研究はマウスにおけるMAIT細胞の存在量の低さから、アプローチが難しかった。しかし、本課題ではVα19マウスを用いることで、(1)MAIT細胞が豊富に存在するとILC2を介する気道炎症が抑制されること、(2)従来の野生型マウスでは不可能であったマウスMAIT細胞の大量精製が可能となり、気道炎症を憎悪する2型自然リンパ球(ILC2)との共培養実験、高度免疫不全マウスへの養子移入が可能となった。これらの実験を通してMAIT細胞がインターフェロンγを介してILC2増殖とILC2からの2型・炎症性サイトカイン産生を抑制する、というメカニズムが明らかにできた。 以上から本研究は気道炎症におけるMAIT細胞の防御的機能ならびにその機序の一端を明確にした点で、順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では自然免疫型T細胞であるMAIT細胞が2型自然リンパ球(ILC2)を介した気道炎症の病態悪化を阻害することを証明した。これまでの研究でMAIT細胞が豊富な新規マウスモデル(Vα19マウス)と精製ILC2・ MAIT細胞を用いたin vitroの共培養実験、高度免疫不全マウスへの養子移入による気道炎症再構築により、MAIT細胞のILC2増殖・サイトカイン産生抑制能、ならびにエフェクター分子としてインターフェロンγを同定した。今後はマウスで得られた知見がヒトにも適用できるのかを明らかにする。 (1) ILC2をヒト末梢血および好酸球副鼻腔炎患者より単離・精製し、IL-33等のアラーミン刺激によって増殖させることができるかを明らかにする。また、マウスと同様にTh2型・炎症性サイトカインがヒトILC2からサイトカイン産生されるのか、否かを明確にする。 (2) ヒトMAIT細胞を健常人ボランティア末梢血から単離・精製し、これにMAIT細胞アゴニストやサイトカインを添加することで、MAIT細胞を増幅させることができるのかを明らかにする。 (3) 上記ILC2と好酸球、MAIT細胞を用いて高度免疫不全マウスにて気道炎症を誘導し、MAIT細胞によるILC2増殖・サイトカイン産生抑制能、ならびに気道炎症抑制能を明らかにする。
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