研究課題/領域番号 |
21K19758
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
天野 一幸 群馬大学, 情報学部, 教授 (30282031)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 計算複雑性 / 計算機援用 / P vs. NP問題 / 論理回路 / 計算量理論 / 整数複雑さ / 論理関数 / 下界 / 計算複雑さ / 離散構造 / コラッツ予想 / 充足可能性問題 / P≠NP予想 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、数学的な難問を「計算」の視点から捉えなおすことを通じて、数理的問題の複雑さや計算に対する新たな理解を得ることを目指すものである。
特に、(1) 数学の世界に残るさまざまな数理的難問に対して、「計算」に関わる現象の理解を目指す計算理論的視点からアプローチし、これに対する進展を目指すこと、(2) 一見無関係に見えるさまざまな数理的問題に対して、その困難さや数理構造の同一性を議論する枠組みの構築を目指すことの2点を主眼とする研究である。
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研究実績の概要 |
本研究は,数学分野において長く未解決となっている様々な難問を,「計算」の視点から捉え直すことで,その困難さを解明し,あるいは,解決への糸口を得ようとするものである.これへ向けて,今年度は,特に以下の2点について成果を得ることができた. 1.計算複雑性理論において,3段論理回路は,興味深い様々な論理関数に対するタイトな複雑さを見積もることのできない最もシンプルな計算モデルの一つである.例えば,3段論理回路で多数決関数を計算する場合,最適な回路は,単調,すなわち,否定リテラルを用いない構造となることが強く予見されていた.本研究では,多数決関数の計算における否定リテラルの効果について探求し,従来の予見に反して,最適と強く予想される単調3段論理回路のサイズよりも小さな論理回路を構成し得ることを明らかにした.これは,少ない変数に対する最適な構造の計算機実験による探索と,その理論的一般化という,研究代表者がこれまで追求してきた手法により初めて実現できたものである.この成果は,国際会議ISAAC 2023の予稿集に掲載済みである. 2. 順列の接頭反転によるソート問題,いわゆる,パンケーキソート問題に関して,HeydariとSudboroghによって約30年前に与えられた最良の下界の証明について検討を行った.特に,彼らが提示した特定の順列を用いた下界の改良の可能性が予想されていたが,本研究では,この下界が既にタイトであることを明らかにし,新たな順列の探索が下界の改良に不可欠であることを示した.この成果は,英文論文誌に投稿し,現在査読中である. その他にも,計算複雑性の解析に現れる極値組合わせ論的問題への,深層学習的アプローチの適用可能性に関する結果等,今後の展開に繋がる興味深い成果が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の研究過程で取り組むこととなった接頭反転を用いたソート問題の解析が,当初の想定以上に難しく,特にその手数の下界の証明に繋がるアイデアの創出に時間を要している.この問題は長年に渡る未解決問題としてその進展が熱望されてきたものであり,研究を継続し進展を得ることを目指したい.また,2023年度後半には,所属組織の改組による研究室の移転作業,および,体調の都合により,発表予定であった国際会議での発表をキャンセルせざるを得ない等の事象が生じた. これらの事由により,本研究課題の研究期間を1年延長することとし既に認められている.これらを鑑み,本研究の進捗については,やや遅れているものと評価する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の新たな最終年度にあたる今年度は,まず,現在検討中の接頭反転ソート問題に対する進展を得ることに力を注ぐ.また,論理回路モデルにおける計算複雑性に関する未解決問題にも,引き続き取り組むものとする.特に,計算機を積極的に用いた手法と理論的解析の融合的手法により,理論計算機科学分野でも難問とされるこれらの問題に新たな進展を得ることを目指す.また,これまでの研究で得られた知見をもとに,本研究課題の最終的な目標の一つである,個々の数学的問題の難しさを計算複雑性の理論の枠組みで説明しようとする課題にも精力的に取り組むものとする. 得られる成果は,順次,研究会や学会等の場において発表し,そこで得られるフィードバックを取り入れつつ研究成果の最大化を図る.また,年度後半には成果を論文としてとりまとめ,論文誌への投稿等を通じてより広く公表するものとする.
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