研究課題/領域番号 |
21K19780
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
若槻 尚斗 筑波大学, システム情報系, 教授 (40294433)
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研究分担者 |
水谷 孝一 筑波大学, システム情報系, 研究員 (50241790)
海老原 格 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80581602)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 擦弦楽器 / 演奏技術 / 相互作用 / 可視化 / 弓圧 / 摩擦力 / 計測 / 制御則 / 制御測 |
研究開始時の研究の概要 |
擦弦楽器の演奏において奏者と楽器の相互作用は重要である。これは弓で弦を擦弦する際の楽器への作用(擦弦力,弓速,擦弦位置など)に対する楽器からの応答(摩擦力,楽器の振動,楽器音など)に対して,熟達者は初学者よりも適切なフィードバック制御則が確立されていることで,より良い音を出すことができる。 本研究課題の目的は,ヒトによる演奏技術の本質を理解し再現可能にすることである。そのため,特に弦楽器における擦弦に着目し,ある程度熟達した奏者が楽器を演奏している状態でヒトと楽器の相互作用を計測することにより,演奏者側のフィードバック制御則をモデル化し,自動擦弦装置に実装することで妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
擦弦楽器の演奏においては奏者と楽器の相互作用が重要である。例えばボーイング(擦弦)だけをみても熟達者の音は初学者のそれとは音の質が大きく異なる。これは弓で弦を擦弦する際の楽器への作用(擦弦力,弓速,擦弦位置など)に対する楽器からの応答(摩擦力,楽器の振動,楽器音など)に対して,初学者はフィードバック制御が未熟であるのに対して,熟達者は適切なフィードバック制御則が確立されていることによる。ここで「演奏技術」とは,この適切にフィードバック制御する能力を含むものである。本課題は,擦弦楽器の演奏においては奏者と楽器の相互作用を計測し「演奏技術」を可視化するとともに,その演奏技術を実装することが目的である。 令和4年度まで,主に小さなカメラを楽器に搭載し,弓から弦に加えられている力を非接触で計測する技術の開発に重きを置いていたが,カメラ画像における写り込んだ背景の影響除去など画像処理面での困難があり,想定していた計測精度が得られておらず研究遂行における足かせとなっていた。令和5年度は,この問題を視野に入れ,これまで使用していたカメラ画像による方法に加え,光強度に基づく弦変位計測法を本課題に応用することも試みた。その結果,非接触で弦の変位を安定して計測することは達成できた。これについては,楽器演奏状態で搭載できる形にするための小型化が次のステップへの課題として残っている。当該年度の研究成果は,2件の国内会議発表と1件の国際会議において,成果発表を行なった。 なお,想定していた進捗状況に対して遅れが出ており,目標としていた人間による擦弦動作を再現できる自動擦弦装置の実現を目指すため,研究期間を1年延長することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に引き続いてカメラ画像を用いる擦弦パラメータ計測において,目標とする演奏状態における計測の実現に必要となる測定精度を達成できていないことなどから計画に遅延が生じている。 また,当初計画では人間による擦弦を再現できる自動擦弦装置の製作を行うことを想定していたが,擦弦パラメータ計測の精度を向上させることを高い優先順位に位置付け,自動擦弦装置については製作を開始しているものの,試作が完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
楽器演奏に対する影響を最小限に抑えることで実演奏の計測ができることを重視していたため光学式の非接触計測を必須と考えていたが,想定よりも難題であり研究の遂行に支障を来している状況である。そこで,研究全体の演奏技術の可視化という目的の達成を最優先にするよう計画を見直し,実演奏に対する影響を最小限に抑えることについては一旦妥協し,当初目標としていた非接触型の光学計測ではなく接触型の力センサなどで代用することも視野に入れ,研究全体の目的達成を目指すための方針変更を行う。なお,擦弦楽器における演奏技術の可視化を達成することが本研究の全体の目的であり,この方針変更によって研究の新規性や有効性を本質的に損なうものではない。
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