研究課題/領域番号 |
21K19785
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池井 寧 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任教授 (00202870)
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研究分担者 |
ヤェム ヴィボル 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20808258)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 代理身体 / 遠隔 / 遠隔タスク / 身体認知 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,1人のオペレータが,遠隔に送った4台の代理身体(アバタロボット)を同時に操ってタスクを並行に実行するために必要となる身体認知の手法を探求する.自己の移動と操作を再現する代理身体で遠隔に臨場し,MR空間シミュレーションで意図する操作を予行し,後にそれを自律実行する代理身体の感覚を身体的な追体験で知覚し不備の発見と修正を行う新しい遠隔操作手法を提案する.遠隔操作の新規の体系化として,代理身体の自律性と時間シフトの遠隔体験を統合し,4タスクの並行実行を実現する設計は,遠隔の実空間タスクを実用化する挑戦的探索である.
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研究実績の概要 |
本研究では,1人のオペレータが,遠隔に送った4台の代理身体(アバタロボット)を同時に操ってタスクを並行に実行するために必要となる身体認知の手法を探求する.自己の移動と操作を再現する代理身体で遠隔に臨場し,MR空間シミュレーションで意図する操作を予行し,後にそれを自律実行する代理身体の感覚を身体的な追体験で知覚し不備の発見と修正を行う新しい遠隔操作手法を提案する.遠隔操作の新規の体系化として,代理身体の自律性と時間シフトの遠隔体験を統合し,複数タスクの並行実行を実現する設計は,遠隔の実空間タスクを実用化する挑戦的探索である. 本年までの研究により,代理身体のロボットのハードウェアの構築を進めることができた.現在,合計4台のアバタロボットの基礎機能を実装し,遠隔操作で任意の方向にロボット身体を移動することが可能である.また,アバターの移動運動時にオペレータに歩行感覚の身体フィードバックを与える機構を構築した.オペレータはHMDとゲームパッドで,複数ロボットの視野に瞬時に切り替えて操作を行った.これを用いて,遠隔地間でオペレータと現場担当者がライブコミュニケーションを行いながら屋内および屋外の移動を実施できることを確認した.この際,Local 5Gおよびwifiを含む高速無線通信を利用した.また,ロボットアームによりオブジェクトの把持移動操作を行えることを確認した.これにより探索作業と簡単な支援作業の基礎部分が設定できた.MRグラスを用いることでMR空間モデルの基礎検討を行った.このシステムは,国際会議1回,国内会議2回の学術展示で体験デモ実演を実施した.会場で多数の体験者が参加することにより,システム機能の実証を行うことができた. これらを通して遠隔の全方位の視聴覚を得て移動する際の実身体と代理身体のマッピングについて今後の研究における検討事項が明確化された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,オペレータが遠隔から操る代理身体ハードウェアとして,4台のアバタロボットを構築することができた.この開発において機能を充実するために制御器も製作した.ロボットアバターで作業を行うために,アームを搭載しコントローラで操作可能とし,ピッキング操作などを行った.アバターロボットの移動もコントローラで操作することができ,前後と回転で目標の動作ができる.操作の入力としてオペレータの頭部の位置と方位を用いて比較を行った.これは評価の観点に依存する結果となっている.アバターロボットの移動時には,オペレータに歩行感覚を提示するために前庭感覚提示用の座席と固有感覚提示用の下肢運動ユニットを用いており,視覚情報と矛盾のない身体感覚の提示が可能となっており,映像酔いの発生防止に機能している.映像は,アバターロボットに搭載したTwinCamユニットから2つの映像を取得してリアルタイムに全方位両眼映像をHMDに提示し,立体視ができるように設定した.この立体視は,アームを用いた作業にとりわけ有効であり,単眼視では作業できない位置関係が重要となる空間操作において効果が立証された.映像は4K30fpsを送信しており,オペレータだけでなく,複数人で体験が可能となっている.通信環境は映像の品質にとって重要であり,通信システムの依存性も調査を行った.都立大学内のLocal 5Gが提供されているが,規格の速度が実現されていない状況では映像通信に不十分であり,学内のWifiの30Mbps以上の速度または公衆5G回線の同等の速度で現時点では利用可能あることを確認した.このため,3回行った学術展示においては,ローカルWifiの構成により実験を実施した.これらにより,遠隔同時体験は高評価を得ることができたが,空間計測と実身体と代理身体の写像についての制御プログラムの制作と実験は研究期間を延長して取り組む.
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今後の研究の推進方策 |
アバターロボットの機能をさらに高めて,身体認知に適合する情報を与え,並行に実行するタスクを効率的に行うことが可能となるように臨場感を制御する手法を探求する.遠隔のアバターロボットの身体状況を取得するセンサー情報を集約する機能を設計し,オペレータへの多感覚提示に対応する情報に変換して提示する機能を実装する.またMR空間を利用して,身体認知をともなった遠隔タスクのシミュレーションを実装する.シミュレーションのための空間は,実世界の作業空間に対応するモデル(疑似ディジタルツイン)をVR空間に提示してモデルオブジェクトを操作できるようにする.複数のアバターロボットに対応して複数の空間を設定して,その間の遷移と記憶方策を検討する.これらにより,多重化された代理身体の自律実行と追体験を統合した遠隔タスクの実行モデルを構築する.
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