研究課題/領域番号 |
21K19789
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
橋本 直己 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70345354)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | プロジェクションマッピング / 明環境 / 光減衰制御 / 光減衰 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,プロジェクタによる投影,即ち“光を加える”という従来の考え方を改め,“光を減ずる”という新しい概念に基づいて,プロジェクタが苦手とする明るい場所でも,実在する物体に多様な見た目や質感を与えるProjection Mapping技術の確立を目指す.これによって、明るい環境においても,周囲のものの見た目や質感を自在に変更し,誰もが同時に映像と一体化できる視覚拡張の実現が期待される.
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研究実績の概要 |
初年度に、明環境におけるプロジェクションマッピングの基礎評価を行い、現時点で実現できる表現と改善が必要な箇所の洗い出しを行った。今年度はその結果に基づき、(1)表現対象の拡張と、(2)対象環境の拡張、について検討を行った。 (1)の表現対象の拡張としては、まず自身の身体へのAR技術を用いた拡張を行った。これは、自身の身体イメージを書き換えることで潜在的な知覚能力を拡張する研究の一環として、明環境においてAR技術で自身の身体を書き換える技術の構築と、その知覚能力拡張の実験への応用を行った。従来のモーションキャプチャを使った身体追跡から、AI技術を使ったカメラベースの追跡手法へと切り替えたが、自然な身体追跡が実現でき、また、実際の身体の映像をAR表現することで、実空間でのプロジェクションマッピング演出への可能性を見いだすことができた。加えて、実空間に溶け込む裸眼立体視による映像提示にも取り組んだ。多くの立体映像は、暗い専用装置の中で、場合によっては専用の眼鏡などを装着する必要があったが、それらを一切廃して、実際に存在する物体と共存可能な立体像提示手法について検討し、試作装置を構築して評価を行った。 (2)の対象環境の拡張に関しては、まずは実空間で映像投影を行う場合に、元々の反射特性や色情報によって受ける映像を最小限に抑えるための、光学的補正手法を導入した。実空間に存在する物体を模擬するために、理想的なランバート反射ではなく、異方性をもつ反射特性を持たせた対象に対する補正実験を行い、簡易なモデルを用いて補正を実現できることを確認した。また、実空間の壁面への映像投影によって、擬似的に異なる空間が接続されたような表現をプロジェクションマッピングによって実現することで、空間そのものの広さ感やそこへの没入感を高められることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の検討において、室内空間で一般的に用いられている照明を廃して、それをも含めてプロジェクションマッピングを実現することで、明環境におけるプロジェクションマッピングと同等の状況を作り出せることが確認できた。そのため、当初予定していたバイザー型のデバイスによる制御を行う代わりに、室内全域を照明としても使えるようなプロジェクションマッピングシステムを前提としたアプローチに方向を修正して検討を進めている。 既存のARを用いた明環境での応用や、今までディスプレイ装置の中に閉じ込められていた裸眼立体像を、室内空間と共存できる形で提示する方式を、試作機を通して実現することで、明環境での映像表現の新しい可能性を切り開きつつあると自負している。また、これまで揺れる衣服などの補正に用いてきた光学的補正技術を、実室内空間にも実現することで、新たな応用領域を開拓することができた。部屋全体を投影可能にした、独立分散型のマルチプロジェクションシステムは非常に柔軟に機能しており、色々な場所や空間を、明環境でのプロジェクションマッピング可能な場へと変えることができている。それを利用して、異なる空間を接続したように演出し、限られた空間をより広く、そしてその壁の向こうに表現された空間への没入感をも高める表示方法を実現することができた。以上のように、明環境でのプロジェクションマッピングがもたらす新たな効果についても、検証を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度取り組んだ裸眼立体像提示技術に関しては、装置が依然として大きく、実室内に溶け込ませるためには装置本体部分の工夫が必要であることが指摘されている。そのため、光学系の効率化を進めることで、装置全体のダウンサイジングを進める。同時に、全周囲からの観察にも対応させる拡張を行っていく。 また、明環境におけるプロジェクションマッピングの有効性をより多角的に検討を進めていくことを継続するとともに、それを実現するプロジェクションマッピング装置についても見直しを行う。これまでは、魚眼レンズを用いた広角撮影による校正を行ってきたが、内部的には2次元処理であり、カメラの撮影範囲に制約を受けてきた。そこで、空間を3次元的に再構築し、その情報に基づいて独立したモジュール間の校正が可能になるシステムの実現を検討している。これによって、校正用のカメラの撮影範囲によらず、自在に投影領域を拡張していくことのできるシステムを実現する予定である。 この新しいプロジェクションマッピングシステムを利用して、明環境における空間の接続実験や、空間が広がったことをイメージさせるメタファーの導入によって、より高い臨場感・没入感を実現できる表現を目指していく。また、接続された空間に、動く人等の動的な要素を導入して、より自然な空間としての接続も目指していく。
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