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神経活動同期によるバインディング仮説の直接的検証実験および数理統計解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K19803
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分61:人間情報学およびその関連分野
研究機関京都産業大学

研究代表者

伊藤 浩之  京都産業大学, 情報理工学部, 教授 (80201929)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
キーワード視覚皮質 / 多細胞活動 / サポートベクターマシン / ブレインマシンインタフェース / ニューロンオペラントコンディショニング / 深層学習 / 蛍光顕微鏡 / 同期活動 / 発火数相関 / デコーディング / 多細胞活動記録 / ブレイン・マシン・インタフェース
研究開始時の研究の概要

本研究の目的は、視覚皮質から記録する細胞間の同期活動強度に応じて報酬を与えるニューロンオペラントコンディショニング実験により、機能とは独立して同期活動の増強を行い、条件付け前後における視覚バインディング課題の正答率の上昇を調べることで、同期活動とバインディング機能との因果関係を直接的に検証することである。

研究実績の概要

2匹のネコに赤外線カメラによる視線計測を行い、方位マッチング課題の訓練を継続した。モニター中央の注視点の凝視中に上下に提示される格子パターンの方向が同じ場合は右に、異なる場合は左にサッケードを行うことで報酬が得られる。1匹は正答率80%程度に訓練が進んだが、眼球に前房出血を生じ、視覚障害を起こしたため訓練を中止した。別の1匹の頭骨にヘッドポストチェンバーを固定し、訓練を開始したが先のネコに比べて学習が遅いため、研究期間内での訓練の完成は難しいと判断し、同時期に多くの個体の訓練が可能なマウスを用いた実験に変更して、課題研究を進めることになった。6極の電極点を持つECoG電極を自作し、マウスの視覚皮質表面上に固定して、局所脳波を計測した。麻酔下のマウスの眼前のモニターに白い長方形刺激を上、中、下のいずれかの位置に提示し、無刺激も含めた4種類の刺激下での局所脳波を複数試行に渡り記録した。深層学習を用いて局所脳波の時空間活動データから提示されている刺激の弁別を行い、有意な弁別能力を確認した。この成果は日本神経科学会で口頭発表を行った。ECoG電極は脳組織の損傷が少ない低侵襲性の記録方法のため、長期間に渡り安定に神経活動が記録できることが分かった。この方法は覚醒下マウスでのニューロンオペラントコンディショニング実験に適用できる。細胞レベルの活動記録では、より侵襲性が低い蛍光顕微鏡による光計測が有効であるため、蛍光顕微鏡と高精度カメラを導入し、ウィルスベクターを用いた蛍光タンパクの遺伝子導入実験の準備を開始した。マウスの視覚皮質への蛍光タンパクの遺伝子導入を行い、細胞活動の光計測を行っていく。また、視覚刺激提示下でのネコの視覚皮質で同時記録された複数の細胞活動の単一試行データから、提示された刺激の方向を判別する情報復号化の研究はすでに完成したため、成果の論文作成を継続した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画で予定していたネコ視覚皮質を対象とするニューロンオペラントコンディショニング実験は、方位マッチング課題を行うための視線計測および訓練システムを構築し、2年間に渡り訓練を継続して来たが、80%程度の正答率まで訓練が進んだ個体が眼の前房出血のため視覚障害を生じたため、訓練の中断を余儀なくされた。そこで、研究期間内で当初の研究目標を達成するために、同時期に複数の個体の訓練が可能であるマウスを用いた実験に変更を行った。マウスを用いた試験的な実験の結果、tetrodeなどの電極の脳内への刺入記録では脳組織の損傷が避けられず、ニューロンオペラントコンディショニング実験の遂行に不可欠である長期に渡る安定した細胞活動記録が難しいことが判明した。このため、脳組織の損傷が少なく侵襲性の低いECoG電極による細胞活動記録を試行し、数週間に渡り安定して細胞活動記録が可能であることを確認した。多チャンネルECoG電極を自作し、麻酔下マウスの視覚皮質から局所脳波の時空間活動記録を数週間に渡り継続し、時空間活動データから提示された視覚刺激位置の復号化が長期間に渡って可能であることを検証した。ECoG電極による細胞活動記録が局所脳波を用いたニューロンオペラントコンディショニング実験に有効であることが確認できた。また、ECoG電極では個々の細胞活動は記録出来ないため、細胞レベルの活動記録が可能となる蛍光タンパクを用いた光計測システムの導入を進めた。ミクロな蛍光ビーズを蛍光顕微鏡とカメラで撮影し、蛍光部分の境界(ROI)を自動的に切り出すことが可能であることを確認した。今後はマウス皮質細胞をAAVウィルス感染させることで蛍光タンパクを遺伝子導入し、細胞活動の蛍光強度計測を行い、研究課題であるニューロンオペラントコンディショニング実験を進める計画である。

今後の研究の推進方策

ネコを用いた方位マッチング課題は訓練がほぼ完成した個体が前房出血による眼の障害を生じたために中止を余儀なくされた。研究目標であるニューロンオペラントコンディショニング実験は、より多くの個体での訓練が可能であるマウスを対象に切り替えていく計画である。マウスに関しては神経細胞をウィルスベクター感染させることで、蛍光タンパクの遺伝子導入が可能であるため蛍光顕微鏡による細胞活動の光計測が可能である。ECoG電極を用いたマウス視覚皮質からの局所脳波の時空間活動記録は侵襲性が低く、ある程度の長期間に渡って安定して記録が行えることを確認したので、この記録方法を用いてニューロンオペラントコンディショニング実験を行っていく計画である。機械学習を用いた局所脳波の時空間活動からの刺激弁別は数匹のマウスのデータ解析を完了し、一貫した結果が得られているので、学会発表と並行して学術論文の発表を予定する。より侵襲性の低い記録方法である蛍光タンパクの遺伝子導入による細胞活動の光計測はブレインマシンインタフェースおよびニューロンオペラントコンディショニングにおいて最も有効な技術であると考えるため、最終年度に実験システムを完成させ、準備的な細胞活動記録を行い、今後の研究の発展に活かしていく計画である。ネコ視覚皮質から記録した多細胞データのサポートベクターマシンを適用した情報デコーディングの研究はすでに完成しているので、最終年度内での学術論文の発表を計画している。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Decoding of visual information from ECoG signals in mouse visual cortex2023

    • 著者名/発表者名
      S.Yamada, R.Kudo, N.Suematsu, H.Ito
    • 雑誌名

      46th Annual meeting of Japan Society of Neuroscience

      巻: 2024 ABSTRACT

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 自然言語処理手法を用いたクックパッドデータの構造解析2023

    • 著者名/発表者名
      川上瑛之、伊藤浩之
    • 雑誌名

      情報処理学会研究報告

      巻: 2023-IFAT-149 ページ: 1-6

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] セルアセンブリー活動の適応的変化の数理基盤の構築とBMIへの応用2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤浩之
    • 雑誌名

      京都産業大学総合学術研究所所報

      巻: 第17号 ページ: 109-113

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ニューロフィードバックの原理と臨床応用2021

    • 著者名/発表者名
      伊藤浩之
    • 雑誌名

      Clinical Neuroscience(臨床神経科学)

      巻: 39 ページ: 843-846

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] マウス脳皮質から得られる視覚情報の復号化2023

    • 著者名/発表者名
      山田将太郎、伊藤浩之
    • 学会等名
      生理研研究会 第5回力学系の視点からの脳・神経回路の理解
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Decoding of visual information from ECoG signals in mouse visual cortex2023

    • 著者名/発表者名
      S.Yamada, R.Kudo, N.Suematsu, H.Ito
    • 学会等名
      46th Annual meeting of Japan Society of Neuroscience
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 自然言語処理を用いたクックパッドデータの構造解析2023

    • 著者名/発表者名
      川上瑛之、伊藤浩之
    • 学会等名
      国立情報学研究所IDRユーザフォーラム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 自然言語処理手法を用いたクックパッドデータの構造解析2023

    • 著者名/発表者名
      川上瑛之、伊藤浩之
    • 学会等名
      情報処理学会第149回情報基礎とアクセス技術研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Contribution of Stimulus Dependent Spike Count Correlations to Decoding of Stimulus Directions from Neuron Populations in Cat Visual Cortex2022

    • 著者名/発表者名
      H.Ito, Y.Tabata, R. Kohno, Y. Maruyama, Y.Mori
    • 学会等名
      45th Annual meeting of Japan Society of Neuroscience
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 視覚皮質の細胞集団を用いた刺激方向復号化における発火数相関の刺激依存性の貢献2022

    • 著者名/発表者名
      田畑由惟、幸野怜歩、圓山由子、森理也、伊藤浩之
    • 学会等名
      視覚科学フォーラム2022 第25回研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Stimulus dependent variations of spike count correlation improve decoding of stimulus directions from neuron populations in visual cortex2022

    • 著者名/発表者名
      H.Ito, Y.Tabata, R. Kohno, Y. Maruyama, Y.Mori
    • 学会等名
      Society for Neuroscience 2022 Annual meeting
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Comparison of Decoding Models of Stimulus Orientations from Neuron Populations in Cat Visual Cortex.2021

    • 著者名/発表者名
      Y.Tabata, R. Kohno, Y.Mori, Y. Maruyama, H.Ito
    • 学会等名
      44th Annual meeting of Japan Society of Neuroscience
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-07-13   更新日: 2024-12-25  

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