研究課題/領域番号 |
21K19805
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋市立大学 (2023) 大阪芸術大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
中川 志信 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (00368557)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ロボット / 能 / 省略 / 想像 / ラジオドラマ / 彫刻的能装束 / デザイン / 聴覚情報 / 彫刻 / UXデザイン / 省略芸術 / 想像芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
21世紀は文化の時代。日本アニメのように日本文化技術を凝縮した先端ロボットが期待されている。本研究では、世界にない省略芸術・想像芸術の「能」のメカニズムを抽出して先端ロボットに適応した「能ロボット」を創生する。既に創生した「文楽ロボット」も抽出した文楽人形の骨格伸縮構造などを適応し、機械であるロボットが生き物に見えるメカニズムを明らかにした。人々を魅了する日本の伝統芸能の匠の技を探求していく。
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研究実績の概要 |
研究目的:能における省略芸術・想像芸術のメカニズムを先端ロボットのUXデザインに活かす基礎研究に対して、概ねの理論を実験から明らかにすることができた。具体的には、能における省略芸術・想像芸術のメカニズムは、究極の省略演技である居グセに集約していた。その居グセを分析した結果、通常の対話や映像ドラマの音質と異なる異質な音情報が潜在していた。その異質な音情報とは、倍音多い感情豊かな音声、効果音、音楽と、人を引き込む説明台詞、独白、ナレーションを多用する物語であった。これらはアニメやラジオドラマにも多用されていた。 この居グセのメカニズムと同機能のラジオドラマをCGロボットに適応した2回の実験から、省略した動きのロボットでも感情豊かな好印象を与える結果が得られた。また誇張したロボットの動きにラジオドラマを適応したCGロボットも、より高く好印象に感じる結果が得られた。さらにラジオドラマの音声の周波数解析から、倍音が増えていることも明らかになった。これらから、倍音多い感情豊かな音声、効果音、音楽と、人を引き込む説明台詞、独白、ナレーションを多用する物語をロボットに適応することで人の印象が高くなることが明らかになった。 次に能の演技では、手先を前に突き出すことでホトトギスが鳴いている事を表現するなど、限定された演技の所作を、語りの内容や他の演者との関係性から観客に想像させる演技の法則があった。加えて、能装束は正面と側面の形体が大きく異なるタイプでは、回転の動きだけで大きく動く印象を与えていた。これは彫刻と同じ効果があった。これらは全て、余白の知覚を与え、その後人に想像させて認知させ、感情や行動につながっていく知覚認知情報処理であることを同定できた。 本研究では能の機序である、倍音多い感情豊かな音声など情報量多い音情報、観客に想像させる演技の法則、彫刻的な能装束の動きを解明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目標は、概ね2022年度までの研究で達成できたと考える。現在は、ロボット実機に能の語りを適応して、その印象評価実験を行うための準備をしている。当社は2023年度で完了する計画であったが、ロボット実機を動かす研究室の都合で2024年度に延長して完了する計画に変更している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で同定できた能における省略想像芸術の機序を適応したロボットの効果は、今後のロボットと人の最適な関係性デザインに役立てることができる。その方策を、私たちの先行研究文楽人形ロボットの課題と掛け合わせて次の内容で新たな申請を行う計画である。 人間の情報知覚の限界を超えて進化する科学技術社会で、今後普及する共生ロボットやIOT機器への対策が課題である。この解決のため、先端の情報や機器に人間的要素を取り入れる学術研究や、ストレス計測の可視化により人自ら行動を制御する健康情報学がある。一方で、私たちは世界に先駆けて伝統芸能「文楽」の機序を解明しそれを適用した「文楽人形ロボット」により、誇張表現で人を惹き込み自然感・生物感・豊かな感情も発現してストレスを軽減する新たなUXデザイン法則を同定できた。そこで与えられる「錯覚」の知覚は、機械を生物と認知する誤った情報処理に効用していた。しかし、それは動的で音も多かった。 そこで本研究では、より静的な動きや音で惹き込む共生ロボットの研究開発を行う。省略想像芸術である「能楽」と「俳句」の人の想像力を活用して静的に惹き込み、自然感・生物感・豊かな感情を創生する機序解明と、それらを適用した共生ロボットで同じ効果を発現させ、IOT機器などに広く応用できるUXデザイン法則の同定を研究目的とする。 つまり「余白」の知覚を機器や情報に意図的に設け、想像による能動的な認知で情報処理を促す新たな学術体系に転換する研究である。更に人の想像力活用は、人にポジティブな心理的効果を育み、ウェルビーイングを促す可能性もあるため本研究ではその設計手法まで探求する。
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