研究課題/領域番号 |
21K19825
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分62:応用情報学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 浩 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 教授 (00226250)
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研究分担者 |
戸谷 吉博 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 准教授 (70582162)
二井手 哲平 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (20802705)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | シミュレーション / 代謝フラックス解析 / 変動光 / 光合成 |
研究開始時の研究の概要 |
シアノバクテリアSynechocystis PCC 6803は光エネルギーを利用してCO2から有用物質を生産できるため理想的な細胞工場として、その工学利用が期待されている。しかし、変動光下では、連続光下と異なり成育の大きさが変化することが知られている。光合成生物では変動光下において高速に変化する光エネルギー供給と低速で変化するエネルギー利用のシステムが連結して動作するシステムとしての仕組みが備わっていると考えられる。本研究では、異なる応答の速さが連結した光合成微生物の仕組みを明らかにすることで、様々な時間オーダーで動作するサブシステムを包含するシステムの動作原理を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
シアノバクテリアSynechocystis PCC 6803は光エネルギーを利用してCO2から直接有用物質を生産できるため理想的な細胞工場として、その工学利用が期待されている。しかし、変動光下では、連続光下と異なり成育の大きさが変化することが知られている。光合成生物では変動光下において高速に変化する光エネルギー供給と低速で変化するエネルギー利用のシステムが連結して安定に動作するシステムとしての仕組みが備わっていると考えられる。本研究では、異なる応答の速さが連結した光合成微生物の仕組みを明らかにすることで、様々な時間オーダーで動作するサブシステムを包含するシステムの動作原理を明らかにすることを目的とした。 本研究においては、Synechocystis PCC 6803を用いて、変動光下で培養を行うコンピューター制御システムを開発している。LEDの光強度を様々な時間間隔で変動させるコンピューター制御光培養装置を開発っている。変動光や一定強度の定常光で培養し、基本的な増殖特性を得ている。また、定常状態や非定常状態を表現する数理モデルを開発することで、様々な光強度において複雑な光化学系の電子伝達経路がどのように電子を流し、NADPHやATPを生成するのか、代謝状態がどのように変化するのかについてシミュレーションを行う準備を行っている。さらに、定常光と振動光でどのような代謝状態を取るかを実験的に確認するため、光混合栄養条件において代謝状態を決定する13C代謝フラックス解析を行うプラットフォームを開発している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、自然環境中で起こる振動光下において光合成生物であるシアノバクテリアSynechocystis PCC 6803が、時間応答の異なる光化学系と代謝系がどのように調節して環境変動に適応しているのかを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために数理モデルによるシミュレーションと実験的な代謝活性、光合成活性の解析を統合するシステムバイオロジーの手法を開発しようとしている。まず、短時間間隔で光強度を変化させた振動光下でのシアノバクテリアSynechocystis PCC 6803の増殖挙動と代謝状態を調べた。定常光と振動光でどのような代謝状態を取るかを実験的に確認するため、光混合栄養条件において代謝状態を決定する13C代謝フラックス解析を実施した。 次に、定常状態や非定常状態を表現する数理モデルを開発することで、様々な光強度において複雑な光化学系の電子伝達経路がどのように電子を流し、NADPHやATPを生成するのか、代謝状態がどのように変化するのかについてシミュレーションシステムを開発していく。これにより、光化学系と代謝がどのように連動して変化する光環境を応答するのかを明らかにしていくことが可能と考えており研究は順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発されたシミュレーションシステム、実験システムを用いて定常光と振動光下の代謝状態を解析していく。また、酸素発生や光化学系の状態を調べる方法も導入する。シミュレーションと13C-代謝解析による炭素中枢代謝解析を統合し、どのようなメカニズムでオーダーの異なる時間遅れを包含する光合成生命システムの安定性や適応性の仕組みを明らかにする。さらに、この研究を発展させ、外的物理要因が高速に変動するような環境にさらされた際に、時間遅れのオーダーが異なるサブシステムが連結する生命システムの適応的応答や頑強性についてのメカニズム解明に向けた理解につなげていきたいと考えている。
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