研究課題/領域番号 |
21K19853
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
山下 洋 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (00583147)
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研究分担者 |
酒井 隆一 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (20265721)
井上 菜穂子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00509515)
馬久地 みゆき 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (40594007)
山口 智史 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 研究員 (80786749)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | スジアラ / 体組成 / 分布域拡大 / 生態系 / 食物網 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の体は食べたものを分解・再構成して作られるため、体の構成成分「体組成」は生態系の食物網構造を反映する。サンゴ礁生態系から岩礁生態系へと分布を拡大しつつあるハタ科魚類スジアラを用いて、食物網構造を反映する体組成の脂質と低分子化合物を各生態系で比較し、その変化に関わる発現遺伝子や腸内細菌叢の変化を捉え、水槽実験でエサの変化と体組成変化の関係を確認する。これらの情報を統合し、生物の分布域拡大メカニズムの研究に体組成の変化という新たな視点を提供する。
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研究実績の概要 |
本研究では、本来の生息域がサンゴ礁生態系であるものの、近年九州の岩礁生態系へと分布域が拡大しつつあるハタ科魚類のスジアラを用いて、生物の分布域拡大メカニズムの研究に「体組成の変化」という新たな視点を提供することを目的としている。本年度はこれまでに得られた天然スジアラの解析を進めながら、種苗生産個体を用いた水槽実験を実施した。魚体の長さと重さを計測して10匹ずつ二つの水槽に収容し、それぞれサンゴ礁生態系の餌としてのグルクンと岩礁生態系の餌としてのサバを週に3回、約3か月間給餌した。実験終了時に再度、長さと重さを計測して成長率を算出したところ、グルクン給餌群とサバ給餌群で大きな差は見られなかった。供試魚は解剖し、筋肉・生殖腺・肝臓・内臓脂肪をそれぞれ代謝物と脂質解析を行うために採取した。また、遺伝子発現解析のために筋肉・生殖腺・肝臓を採取し、腸内細菌叢の解析のために消化管内容物も採取した。質量分析の結果、餌としたグルクンとサバでは脂質の組成が大きく異なり、特にグルクンに特異的に多く検出された脂質が存在した。しかし、それらを捕食したスジアラの脂質を見ると、サバ給餌個体からもグルクン特異的な脂質が検出され、全体としてその組成に大きな差は見られなかった。また、遺伝子発現や腸内細菌叢も両者で大きな差は見られなかった。これらの結果は天然のスジアラの分析結果とも一致する。生物の体組成には食べた餌の成分に影響されるものがあるが、スジアラは食べた餌の組成に関わらず、一定の体組成を維持できると考えられ、それが分布域拡大の原動力となる可能性が示唆される。
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