研究課題/領域番号 |
21K19864
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
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研究分担者 |
安元 剛 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (00448200)
坂田 剛 北里大学, 一般教育部, 准教授 (60205747)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 光合成 / 乾燥適応 / 小笠原 / ポリアミン / CO2濃縮機構 / ルビスコ / CO2/O2比親和性 / 葉肉コンダクタンス / CO2固定 / 小笠原諸島 / 世界自然遺産 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化等による熱波や干ばつは、光合成や収量の低下を引き起こし、生態系の物質循環の起点となる純一次生産量を減少させ、生態系機能や生物多様性に不可逆的なダメージを与える。本課題は、ポリアミンによる光合成低下の補償作用から、樹木の乾燥耐性や乾燥枯死の生理機構を調べる。この研究は、植物のストレス耐性や光合成維持機構に関して、今まで研究されてこなかった新たな視点を与えるものである。さらにこれは、温暖化影響下での森林の樹木組成や機能の変化予測ばかりでなく、具体的な方策のなかった地球温暖化や乾燥化に対する森林適応策の構築・生態系保全にも繋がる挑戦的な研究課題である。
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研究実績の概要 |
本研究は,大気CO2を溶液中に捕捉・濃縮するポリアミン類が,光合成のCO2固定を促進して光合成の低下を補償する作用を持つのか検証し,気候変動下で進行する樹木枯死や森林衰退をポリアミンが緩和する可能性を検討する。特に乾燥が進行すると,気孔閉鎖による光合成低下が起き,ポリアミンによるCO2補足・濃縮が光合成低下の補償機構として重要な役割を果たすと予想される。そこで,国内ではまれな乾性低木林が成立している小笠原諸島父島において,ポリアミンが促進すると予想される葉肉細胞表面から葉緑体までのCO2拡散コンダクタンス(葉肉コンダクタンス)を,乾燥が進行する野外環境で評価した。葉肉コンダクタンスの評価には,R3年度に得たそれぞれの種のルビスコの基質親和性(CO2/O2比親和性)を用いた。 調査は,乾性低木林に生育する複数樹種を対象に行った。対象樹種の中でテリハハマボウとシャリンバイは乾燥の進行に対して対照的な応答を示した。比較的土壌の水ポテンシャルが高い時期の気孔コンダクタンスは,両種とも同等(最大で0.23 mol H2O m-2 s-1程度)であったが,土壌の乾燥によってシャリンバイは気孔コンダクタンスが大きく低下した(最大で0.05 mol H2O m-2 s-1)。一方,土壌乾燥によるテリハハマボウの気孔コンダクタンスの減少は軽微で,乾燥前の半分程度を維持していた。葉肉コンダクタンスはいずれの時期においても,テリハハマボウのほうが高く葉肉細胞でのCO2拡散能力が高いことが示された。また,乾燥が進行するとシャリンバイは気孔コンダクタンスだけでなく葉肉コンダクタンスも低下する傾向がみられたが,テリハハマボウでは葉肉コンダクタンスが高くなる傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉内にあるポリアミンの主要な3つの化合物の含量に関して、HPLCによる定量プロトコルが完成した。その結果、葉内のポリアミン含量の定量化ができるようになった。ポット苗木を用いた実験は順調に進んだが、小笠原諸島父島で野外で行う予定であったポリアミン生合成阻害剤(DFMO)を用いた実験は、天候のために予備的実験にとどまってしまった。今年度は、ポリアミン生合成阻害剤による野外実験を追加し、ポリアミンのCO2捕捉・濃縮の作用が乾燥ストレス下での光合成の低下を補償しているか、さらに検討を行なう。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に,葉肉コンダクタンスがポリアミン生合成阻害剤(DFMO)によって変化するか予備的な実験を行ったところ、テリハハマボウでのみ葉肉コンダクタンスが低下する傾向がみられた。その結果を踏まえ本年度は、DFMOおよび他の阻害剤により、葉のポリアミン含量と葉肉コンダクタンスがうける影響を評価する。またこの評価は昨年度に引き続き、小笠原諸島父島での野外実験で行うとともに、ポット栽培した小笠原樹木種の幼個体を使った室内実験により実施する。葉内のポリアミン含量は、昨年度に開発したHPLCによる定量プロトコルを使用して評価できるようになったので、光合成の生理活性の変化とともに、葉内の3つのポリアミン量との関係をとる。
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