研究課題/領域番号 |
21K19869
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
桑原 知彦 徳島大学, 技術支援部常三島技術部門, 技術員 (40645165)
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研究分担者 |
水口 仁志 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (30333991)
高柳 俊夫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (50263554)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | HPLC-電気化学検出法 / 多段電極検出器 / トラックエッチ膜フィルター / スクリーニング検査 / 環境・食品分析 / 食品・環境分析 |
研究開始時の研究の概要 |
グローバルな物質流通が当たり前となった今日において、人々が安全に安心して暮らせる社会を構築するためには、食品や環境に含まれる有害化学物質を迅速かつ簡便に分析するシステムが極めて重要である。本研究にて提案する、複数の陽極-陰極ペアを備えた新しいHPLC-多段電極検出法は、その検出パターンから、特定の有害化学物質を識別することができる。これにより、そもそも何が含まれているか分からない試料に対して、含有する薬剤に目途をつけるスクリーニング検査の実施が可能となり、食の安全の確保に大きく寄与する。
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研究実績の概要 |
本年度は,4枚の作用電極で構成される,四重電極検出器を備えた陽極・陰極ペア検出HPLCシステムのスタートアップを実施した。まず,モデル物質として選定した種々のフェノール系化合物の分析を試みたところ,各作用電極において,電解反応にともなう酸化電流ならびに還元電流のシグナルを問題なく取得することができた。その挙動は,これまで進めてきた二重電極検出器におけるフェノール系化合物の検出パターンと十分に整合していた。可逆性の高いカテコール類は,第一ペア・第二ペアで共に酸化電流およびそれに付随する還元電流を示した。一方,レゾルシノールは,第二ペアで酸化電流およびそれに対応する顕著な酸化電流を示し,カテコール類とは異なる検出挙動を示した。カテキン類は,第一ペアではカテコール構造を反映し,酸化電流およびそれに付随する還元電流を示したのに対し,第二ペアではレゾルシノール構造を反映し,酸化電流およびそれに対応する酸化電流を示した。したがって,本システムにより,カテコール類とカテキン類を明確かつ簡便に識別できることが明らかとなった。また,実際試料として,市販のコーヒー飲料の分析を試みたところ,その保持時間と検出挙動より,コーヒーに含まれるクロロゲン酸(3-CQA)ならびにカフェイン酸のピークを同定することができた。以上より,複雑な夾雑物を含む実際試料において,特定の成分を識別することが可能であったことから,陽極・陰極ペア検出HPLCシステムの有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに,陽極・陰極ペア検出HPLCのスタートアップならびにモデル物質を用いた理論的検証とデータベース化は,概ね完了している。また,お茶やコーヒー等の食品試料の分析も進めており,複雑な夾雑物を含むクロマトグラムにおいて,特定成分のピークを識別することが可能であった。これまでの研究より,本システムのクロマトグラムから取得される保持時間と検出挙動を総合的に評価することで,実際試料に含まれる成分を簡便かつ精密に特定できることが実証されつつある。したがって,計画はおおむね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は,本研究課題の最終目標である,環境や食品に含まれる有害物質の評価への応用に向け,研究を進める。複雑なクロマトグラムを示す食品等の分析において,陽極・陰極ペア検出HPLCにより,特定の検出パターンから有害化学物質あるいはその類似物質を識別する手法を提案する。これまで,実際試料として,コーヒーやお茶等の分析を実施してきたが,抗酸化成分を多く含むワインなどの分析へも展開していく予定である。また,近年健康に対する有害性が指摘されている,ビスフェノールAの検出にも挑戦する。以上より,環境や食品中に含まれる有害化学物質を簡便に識別する手法を提案することで,食の安全の確保に貢献する成果を目指す。
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