研究課題/領域番号 |
21K19871
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱村 奈津子 九州大学, 理学研究院, 教授 (50554466)
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研究分担者 |
光延 聖 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70537951)
鹿島 裕之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (70780914)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 重金属回収 / 微生物電気化学培養 / 微生物重金属代謝 / 重金属排水 / バイオミネラル / 微生物電気化学 |
研究開始時の研究の概要 |
鉱山開発などにより放出される重金属廃水は、環境への汚染影響や長期的な処理が懸念される一方で、希少金属類を含む有用金属回収への利用が望まれている。しかし、既存技術では廃水処理に大量の薬剤や電気エネルギーが使用されること、また、廃水中に混在している金属類から低濃度の有用金属を特異的に回収することが困難である点などが課題となっている。そこで本研究では、微生物電気化学プロセスと代謝反応の基質特異性を活用し、重金属廃水からの有害金属除去と、産業的利用価値が高い有用レアメタルを回収できる、環境負荷の少ない持続可能な新規技術の構築を目的に、電気微生物によるバイオミネラル生成機構の解明に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本研究では、新規な環境生物機能として注目されている微生物電気化学プロセスと代謝反応の基質特異性に着目し、電気微生物のバイオミネラル生成による有害金属の固体化除去プロセスを明らかにすることを目的としている。 本年度は、新規電気微生物資源の探索を目的に、持続式現場電気培養装置を鉱山重金属廃水現場に設置し、電流密度0.1-0.4A/m2の通電による集積培養を51日間及び6ヶ月間実施後に回収し解析を行った。回収時には生物学的電気活性が持続しており、電極に蓄積したバイオフィルムの16S rRNA遺伝子アンプリコン解析を行った結果、通電51日後の電極では約80%の相対出現頻度割合を示すGamma-Proteobacteriaに属する新規優占種の集積が検出された。それに対し、通電無しの電極試料では出現頻度2%以下の系統群が相対頻度割合の95%以上を占めており、通電後の電極で集積していた新規微生物優占種も数%の割合でしか検出されなかった。また、通電後6ヶ月の電極においても同様の優占株が55~75%の相対出現頻度割合を占めていたことから、本新規微生物は通電後51日後にはすでに優占化しており、その後数ヶ月は最優占株であり続けることからも、電気活性微生物であることが示唆される。電子顕微鏡観察より、この新種微生物は桿菌であり、ナノワイヤーと類似した細胞外繊維を産生していることが確認された。今後、本優占種のゲノムおよび遺伝子発現解析を進め、金属代謝ポテンシャルを明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初予定していた現場培養による新規電気微生物の集積培養を実施した。また、ゲノム解析に向けたDNAやRNA抽出法の検討も行っており、予備的な配列解析も実施済みである。今後の解析実施に向けて問題なく進んでいる。また、現場電気培養で生成するバイオミネラルの形態分析や電気化学的な実験系も準備を進めており、次年度に計画通りに実施予定である。これらの状況から、概ね当初の目的に沿って順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
集積微生物群によるバイオミネラル生成および有害金属除去プロセスの解明に向けて、現場培養で生成したバイオミネラルの形態分析を行うとともに、ゲノム解析と遺伝子発現解析を進め、集積微生物群の金属代謝ポテンシャルを明らかにする。また、現場培養系の時系列調査を実施し、電気微生物群の集積とバイオミネラル生成過程をモニタリングする。さらに、電気化学的プロセスによるバイオミネラル生成および金属吸着について、模擬実験系を用いて電極表面のpH変化や炭酸塩集積について検討し、現場培養系との比較を行う。
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