研究課題/領域番号 |
21K19918
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
玉川 雅章 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (80227264)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 白血球 / 水中推進 / 濃度マランゴニ効果 / ドラッグデリバリーシステム / 免疫機構 |
研究開始時の研究の概要 |
人体中の血液に含まれる白血球は,炎症部へ向けて移動する走化性という機能を持つ.走化性には,(a)表面の偽足の運動による壁面移動と(b)液中における泳動の2つがある.このうち(b)については,炎症部より生成されるサイトカイン濃度勾配を感知して移動すると考えられているが,その液中推進機構は解明されていない.液中での濃度勾配による微粒子の運動は,膜表面での界面張力の勾配の変化によって駆動される濃度マランゴニ効果によると考えられるが,無機物と同じ機構かどうかは不明である.そこで,本研究では,白血球の膜機能の液中推進への影響とその推進機構解明を行い,ドラッグデリバリー用マイクロ粒子駆動源の開発を行う.
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研究実績の概要 |
今年度は大きく分けて以下の2つの結果が得られた.
(1)前年度に引き続き,顕微鏡下で,サイトカインの濃度勾配を白血球に作用し,その移動速度と濃度分布,勾配を各時刻において同時に求めた.特に,前年度明らかにできなかった,移動速度に及ぼす壁面からの距離と白血球回転の影響について調べた.移動速度の壁面からの距離の影響については,約10μmの距離までは,比例的に変化することがわかった.これについては,(生きた)白血球については,前年度観察済みの壁面に近づいたときに生成される偽足による抵抗が増すことや,濃度境界層の影響によって,移動速度が低下することが推論づけられた.一方,白血球回転の影響については,(a)回転周期が長くなるにつれ,移動速度が低下すること,(b)壁面からの距離が近いと,回転周期も長くなることがわかった.また,これらの推進機構の数理モデルを,移動速度と濃度勾配の関係に回転による濃度マランゴニ効果の1次元モデルを作成し,特に濃度勾配変動がsin波の時の移動速度を解析したところ,移動速度と回転周期の関係について実験結果と定量的には一致しないものの,定性的には一致することがわかった.
(2)濃度勾配に伴う界面張力勾配による推進力の発生を求めるため,界面張力の影響を考慮した2次元円柱周りの流れの解析を行った.具体的には,回転円柱周りの流れに対して,膜上と周囲流体について分け,連続の式,Navier-Stokes 方程式,濃度の輸送方程式を解くが,まず,弱連成問題として扱った.すなわち,これらの2つの領域の連成問題を周囲流体の濃度場をあらかじめ計算し,その濃度勾配が円柱に作用して,界面(円柱表面)での濃度(表面濃度)を変化させ,簡易的に界面での濃度分布を得ることができた.しかしながら,回転の影響や周囲流体の濃度場と円柱表面の濃度場の完全な連成問題としては扱えていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題の1つである濃度駆動型推進微粒子の開発については,比重が水と同程度のポリスチレン粒子(数ミクロン程度)に対し,超時短フェムト秒レーザを用いて微細加工を試みたが,位置制御とパワー制御が不十分であったため,微細孔生成の制御に至っていない.そのため,延長された次年度においては,作用されるポリスチレン粒子の方を微動が可能なアクチュエータなどを用いて微細孔分布作成を試みる.
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今後の研究の推進方策 |
2年間の課題遂行の中で得た移動速度の壁面からの距離の影響について,偽足発生などの白血球の生物的な機構に起因するものか,濃度境界層などの物理的機構に起因するものかを,当初研究期間で購入が間に合わなかった顕微鏡に増設する蛍光イメージング装置を用いて解明する.
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