研究課題/領域番号 |
21K19989
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
細野 香里 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (40906822)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 扇情主義 / 感傷主義 / 奴隷制 / 米墨戦争 / 南北戦争 / 出版文化 / 拡大主義 / 扇情小説 / 領土拡張 / 19世紀アメリカ大衆文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1840年代のアメリカで隆盛した扇情小説に着目し、当時の扇情主義的作品群のうち特にジョージ・リッパードによるメキシコ辺境を舞台とした作品において、人種的他者を表象する際に地理的想像力がいかに援用されていたかを分析する。さらに、扇情小説とは区分されない、E・A・ポー、H・メルヴィルとC・W・ストダードの海洋文学作品において扇情的要素がいかに作用しているかを検証し、アメリカ文学における扇情主義を複合的に評価する。その過程で、扇情小説の近接ジャンルである感傷小説との差異を明確化し、扇情主義が19世紀アメリカの領土拡大の機運にいかに寄与し、あるいは批判を加えてきたのかを明らかにする。
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研究成果の概要 |
本研究では、家庭小説の代表的作家であるルイザ・M・オルコットの扇情的スリラー作品分析を通じ、扇情主義と感傷主義の差異を再検討した。そのうえで、扇情主義の代表的書き手であるジョージ・リッパードの、都市人種暴動に取材した作品の背景に描きこまれた同時代の拡大主義的機運に着目し、扇情主義がいかにアメリカの領土拡大の欲望に寄与し、あるいは批判を加えてきたかを考察した。並行してチャールズ・W・ストダード、マーク・トウェイン、ジャック・ロンドンの太平洋を舞台とした著作群において、人種的他者を描く際に扇情的要素がいかに用いられているかを検証することによって、アメリカ文学における扇情主義を複合的に評価した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、地理と人種的他者という別個の大枠の概念が密接に関わり合っていることを踏まえ、南北戦争という地域間対立を経験し人種的他者に対する収奪行為によって成り立つ拡大主義を掲げ大国への道を歩んだ19世紀アメリカの葛藤を、扇情的文学作品を通じて読み解く試みである。近接概念である感傷主義と比べ、アメリカ文学研究の文脈で大きく取り上げられてこなかった扇情主義を分析対象としたことに一つの意義がある。特に本研究で取り上げたジョージ・リッパードは本国アメリカでもいまだ十分に学術的研究の蓄積が十分になされていない書き手であり、今後も彼についての研究を継続することでさらなる学術的貢献を果たすことが見込まれる。
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