研究課題/領域番号 |
21K20024
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野田 農 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (20907092)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | エミール・ゾラ / フランス自然主義文学 / リアリズム / 地方都市 / 移動 / 交通 / 地方 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀フランスの文学作品において、都市と地方の対立、また都市と地方の移動を描くことの重要性が増大する。これは歴史的な観点から見れば、世紀半ばの科学技術と産業の飛躍的な発展に伴い、鉄道をはじめとする多くの新たな交通手段が登場した事と無関係ではなく、とりわけ同時代のリアリズムの小説作品には頻繁に描かれることである。本研究は、こうした歴史、社会、科学技術を文学作品がいかに表象したかを明らかにすることを目的とし、フランス19世紀後半の自然主義における代表的作家エミール・ゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』と『三都市叢書』を対象として分析する。
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研究実績の概要 |
エミール・ゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』の地方及び地方都市を舞台とする作品と『三都市叢書』を分析対象として、19世紀後半のフランス文学作品に 描かれた空間の表象と登場人物の移動を描いた記述について考察することを目的とした本研究の2年度目の実績として、前年度に引き続き、『三都市叢書』の第1巻目の作品である『ルルド』に関して、この小説の第1部及び第5部に描かれた主人公たちがパリと物語の中心的な舞台となる巡礼地ルルドとの往復の旅を描く場面に関して、風景や移動の観点から分析を試み、同じく鉄道を通じたパリと地方都市との間の移動を描く作品であり、『ルーゴン=マッカール叢書』の1巻をなす作品でもある『獣人』に描かれた鉄道の移動及び列車内の場面の描写との比較を行った。その成果を、研究論文「ゾラの『獣人』『ルルド』における鉄道の表象-風景・移動・知覚の観点から-」として、九州大学フランス語フランス文学研究会の雑誌「ステラ」第41号に発表した。 また『ルーゴン=マッカール叢書』の地方及び地方都市を舞台とする作品に関しては、初年度で扱った第1 巻目の作品『ルーゴン家の運命』(La Fortune des Rougon)に加えて、この作品の続編とも言える第4巻『プラッサンの征服』(La Conquete de Plassans)、第12巻『生きる喜び』(La Joie de vivre)、第13巻『ジェルミナル』(Germinal)、第15巻『大地』(La Terre)に関して、これらの作品の中で本研究テーマに関わる記述箇所を中心に分析を引き続き進めている。 最後にフランス本国のゾラ研究チーム主催のセミナーへオンラインで参加し、パリ近郊メダンの別荘の歴史や、ゾラの最晩年の作品に関する専門家の研究発表を随時聴講し、作家の生涯や作品のみならずフランスにおける近年の研究状況に関する見識を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究においては、初年度に行った『三都市叢書』の第1巻目の作品である『ルルド』に関してその成果を論文の形でまとめることができた。また、『ルーゴン=マッカール叢書』の地方及び地方を中心とする作品のうち、初年度から扱っている第1巻『ルーゴン家の運命』に加えて、『ジェルミナル』、『大地』、『生きる歓び』など複数の作品に関して分析を継続して行っている。初年度につづき、コロナ禍でフランスへの渡航が困難であったため、参照できる資料も限られていたが、最終年度の調査へ向けた基礎的な研究はある程度進めることができた。以上の点に鑑みて全体として概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から引き続き、これまでの研究成果を、学術論文や翻訳の刊行という形で成果発表して行くことを目指す。具体的には初年度の『ルーゴン=マッカール叢書』の第1巻『ルーゴン家の運命』に加えて、『プラッサンの征服』、『ジェルミナル』、『大地』、『生きる歓び』に関する分析に関しては、大学の紀要論文での発表を現在目指している。また『三都市叢書』の第1巻『ルルド』に関しては、引き続き日本語翻訳を進めると同時に、19世紀の文学や美術におけるリアリズムに関する共著書の形で刊行することを目指しており、目下その原稿の執筆を進めている。また最終年度に当たる2023度中は、フランス国立図書館及びITEMのゾラ研究チームの研究施設での文献調査を実施し、各大学機関や研究機関でのセミナー等に参加を目的として、研究調査のためのフランス渡航の準備を進めている。
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