研究課題/領域番号 |
21K20036
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水上 遼 東京大学, 東洋文化研究所, 特任研究員 (30908083)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | イスラーム / スンナ派・シーア派関係 / 十二イマーム / 美質の書 / イルハン朝 / 崇敬 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、イスラームの二大分派であるスンナ派とシーア派の関係史を、一般的にシーア派(特に十二イマーム派)の崇敬対象とされる十二イマームをめぐる両派間の議論の歴史から再考する。十二イマームはシーア派教義の中核をなす存在であり、同派の学者たちは彼らの「美質」の伝承を集め、美質の書という文献を繰り返し編纂した。一方、スンナ派学者の一部は12世紀以降に十二イマームへの崇敬を表明し、彼らの美質の書を編纂した。本研究は両派の美質の書作品群を網羅的に分析し、そこでの宗派意識の表出や他派への視点などを考察することで、両派の対立だけではない対話の歴史を明らかにし、新たなイスラーム理解を獲得することを目指す。
|
研究成果の概要 |
本研究では、一般的にシーア派の宗教指導者とされる十二イマームが、前近代にスンナ派の間でも広く崇敬されていた現象に着目し、十二イマームがスンナ派の文脈の中でいかに崇敬対象となったかを、十二イマームの美質の書という文献群から分析した。その結果、大きく3つの研究成果が得られた。第一は、イマームに関する伝承が宗派を超えて受け継がれていたことを13-17世紀という長期的な枠組みで明らかにした論文であり、第二はスンナ派の十二イマーム崇敬の中でマフディー(救世主)がいかに理解されていたかを検討した論文、第三は14世紀イランの宗派間関係について詳細な記述のある年代記『オルジェイトゥ史』の訳註である。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
スンナ派とシーア派に関してはこれまで対立や思想上の相違に関心が集中していたが、十二イマームという両派共通の崇敬対象をめぐる議論や宗派間交流の詳細を明らかにしたことにより、両派の相互理解や自派・他派認識の歴史的展開を新たな視点から検討することが可能となった。それにより、イスラームの宗派についての本質主義的理解を克服する手がかりを得て、その内部の思想的多様性や思想形成の長期性、そして宗派境界の柔軟性に関する理解を深めることができた。
|