研究課題/領域番号 |
21K20062
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
田中 龍一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (80910124)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 平安時代 / 平城京 / 薬師寺 / 瓦 / 製作技術 / 瓦当文様 / 再建 / 復古 / 平安京 / 都城 / 古代寺院 / 三次元計測 / SfM-MVS / 大和国 / 生産体制 / 歴史考古学 / 寺院 / 瓦生産 |
研究開始時の研究の概要 |
平安時代における瓦は、国家や有力寺院・貴族等によって生産と流通が管理され、使用先も極めて限定されたものであった。そのため、律令体制の再編や崩壊といった現象と連動して瓦生産・流通構造も変質する。 本研究は、平安京と大和国で消費された瓦の分析を通して、平安時代における造瓦組織の実態や、瓦生産・流通システムの一端を明らかにするものである。 肉眼による製作痕跡の観察や三次元計測による道具痕跡の同定を通して、平安京と大和、地方諸国の技術交流や製品流通の様相を解明し、当該期の瓦生産・流通構造の特質を浮き彫りにする。
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研究実績の概要 |
一年延長した2023年度は、薬師寺における平安時代の軒瓦を中心に対象に検討を進めた。成果の概要は以下の通りである。 平安時代における薬師寺の被災と再建の状況を整理したうえで、軒瓦を中心に製作技術の分析と瓦当文様の分類をおこなった。平安時代の再建にあたって創建期の軒瓦の瓦当文様を模倣することが従前より指摘されていた。今回の検討でその模倣のありかたにも、複数の類型があることを明らかにした。これは、一度に多くの堂宇が焼失したことと、再建に数十年の年月がかかったことに起因するとみられる。また、文様だけでなく形状(とくに軒平瓦の顎形状)も模倣していることを指摘した。いっぽうで、その成形技法は大きく異なっており、外見のみを模倣していることを指摘した。 また、平安時代の再建事業にともなう軒瓦の製作技術のなかに、中世瓦に特徴的な要素(離れ砂や凹型台の使用)が含まれることを指摘した。離れ砂は、瓦の素地となる粘土と造瓦道具(成形台や叩き具など)の離脱剤として用いられているものである。古代瓦のなかでも使用されているものもあるが、凹型台や瓦当笵(文様木型)とセットで離れ砂を使用する点で中世瓦と共通するものといえる。 これらは、採用初年度から2年目にかけて分析検討をおこなった川原寺の平安時代の再建期の瓦にも共通する要素である。両者の関係性や他の類例に関する課題が明確になったと同時に、大和国における瓦生産の古代~中世移行期の様相を考えるうえで重要な見通しを得ることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定を変更して今年度は薬師寺出土瓦を中心に検討を実施したが、これまで実施してきた川原寺との比較検討をおこなう前段階まで進めることができたため。また、古代~中世移行期の状況を示す要素を抽出し、今後の見通しを立てることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、薬師寺の瓦を中心に検討を進め、薬師寺と川原寺の共通性について見通しを得ることができた。 再延長した最終年度は、これらの比較検討を進めるとともに、平安時代の瓦における中世瓦的な製作技術の抽出作業を通して、大和国内における瓦生産の古代→中世の移行過程についても見通しを立てる。
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