研究課題/領域番号 |
21K20066
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 亜望 神戸大学, 国際文化学研究科, 学術研究員 (70913698)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | バングラデシュ / 都市 / ジェンダー / 労働 / ネットワーク / 不確実性 / ダカ / 社会変化 / 親族 / 都市労働 / 擬制的親族関係 / 親族ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、バングラデシュの首都ダカにおいて、人々が不確実な生活を確実なものへと繋ぎ止めるために用いる、親族呼称を介した扶助と共同の関係を明らかにする。特に近年、新たに労働市場に参入した女性たちは親族や非血縁者も含んだ親族関係の拡張により、仕事の場の獲得やジェンダー空間を再編成している。しかし他方では、当該社会では強固な親族構造の欠如と個人性の高さが指摘されている。不確実な親族構造がありながら、非親族までを含んで親族ネットワークを生み出そうとする実践を捉え、仕事をめぐる分業や扶助の実態を明らかにし、都市生活者の生活の重要な資本である親族的カテゴリー形成の様相と、扶助を支える規範を検討する。
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研究実績の概要 |
夏季休暇中にバングラデシュの首都ダカでの現地調査(24 泊 25日)を実施した。現地調査では、以前から調査をしてきた手工芸品生産工房において、生産者の生活状況、労働状況、家族関係に関する聞き取りと参与観察を行った。また、ショッピングモールにてフードコートの店舗、衣料品および携帯電話の小売店で勤務する従業員に女性の就業に関する聞き取りを行った。さらに、現地滞在では、女性の就労やジェンダー規範をめぐる民族誌を中心とした、様々な文献を収集するとができた。 これらのインタビューおよび参与観察から、ダカ市内において女性の就労の場所が拡大していることを確認した。手工芸品工房での観察、聞き取りから、彼女たちの生活状況についてリビングコストの高騰といった経済的な状況の変化とともに、大型のスマートフォンや近隣諸国から輸入されるのバッグなど、消費財への欲望がかりたてられる状況が確認され、これらが女性の就労拡大の背景の一つである。新たな発見としては、女性たちがショッピングモール内の店舗で仕事をするようになった個別の経緯として、夫の就業状況の悪化といったこれまでにもみられた理由だけでなく、新型コロナウイルスのパンデミック状況、ダカ市内でのテロ事件の発生を契機とした失業などグローバルな社会経済状況を反映したものもあった。また、「妻」や「母」として家族の経営を支えるための就労といった従来のパターンだけでなく、学生として高等教育を受けながら就労をするという新しいパターンも確認できた。 本研究の核となるテーマである就労に関するネットワークについては、仕事を得るにも血縁関係、近隣住民との関係、掲示広告などの多様な手段を利用して、情報を収集し、就業を可能にしていることを確認した。血縁、非血縁など利用可能なネットワークを駆使していることは確認されたが、それらの意味するところについては今後詳細な分析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大の状況や各国の出入国の条件が緩和されたことにより、計画初年度に実施することができなかった現地調査を2022年度に実施することが可能となった。2022年の8月に実施したバングラデシュでの現地調査、および別予算(人間文化研究機構グローバル地域研究推進事業)で実施した2023年3月の同地域での現地調査(19泊20日)において、必要なデータを収集することができた。また、現地滞在中に女性の就労やジェンダー規範をめぐる民族誌を中心とした、様々な文献を収集するとができたので、これらの精査をこれから行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2つの研究会での発表、2つの学会発表を予定している。発表では、現地調査で得られたデータを分析し、広く意見交換をして、議論を精錬させていく。 研究の成果を論文としてまとめる作業を行う。
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