研究課題/領域番号 |
21K20071
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
小田島 理絵 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (50454004)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 文化遺産 / 東南アジア / 文化人類学 / 開発 / 支援 / 民族誌 / ラオス人民民主共和国 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題において研究者は、次の二点を追究していく。
(1)東南アジアを事例に、文化遺産概念と遺産保護実践の複数性と創造性を検証する。資料分析とフィールド調査から、唯物論的かつデカルト的物心二元論に基づく西洋的遺産と遺産保護との差異を検証する。
(2)本研究課題を事例として、優越的な文化の解釈者であり文化=遺産の救済者という旧来の文化人類学の立場の省察を行う。それを基に、東南アジアの文化遺産保護に関する外部者の支援の可能性を検証する。研究者を調査実施主体かつ研究対象という二重の立場に位置づけ直し、外部者と現地文化社会の関与と支援を再考しつつ、学術、権威性、支援の再帰的検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、東南アジアを事例として、①文化遺産概念と遺産保護実践の複数性と創造性を検証しながら、②優越的な文化/遺産の解釈者であり救済者という旧来の外部世界の関与者の立場を再考しつつ、外部世界による遺産保護支援の可能性と創造性を検証することである。
①の点については引き続き、関連する第一次・第二次資料の検証を行った。世界的に流布する遺産概念とそれに基づく保存・展示・修復活動が、西欧的思想への傾倒がみられることに関して、様々な方面からの指摘がみられることがあらためて明らかになった。こうしたことから、世界遺産条約に関わる国際機関等は、遺産の基本類型(自然と文化の二元論に基づく)の見直しに導かれた。この経緯では、遺産類型の多様化が生じてきた。しかし、実際の世界各地域における遺産制定や保護活動には、自然・文化の古典的遺産観念・類型の影響力は強いようである。東南アジアにおいても、現実的な遺産と古典的な遺産類型とは必ずしも一致していない。各文化社会的次元からの再検証により、現実の様態が詳らかになる。
当該地域の遺産保護に対する外部者の関与・支援に関わる②の検証には、①の考察が重要となる。当事者と外部者間の遺産の視座に差異が生じた場合、支援の意義において課題が生じてくる可能性がある。構造上、支援の現場では、支援者側の世界で先行する遺産観念と技術が強い影響力をもつ可能性があるため、潜在する構造上の課題を検証していくことの重要性が浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東南アジアでのフィールド調査を基にした検証によって、本研究課題を具体的かつ精緻な研究とすることが可能となる。この目標を果たすために、収集資料の分析を進め、それを基にした実地での検証を計画してきた。しかし、新型コロナウイルス禍の影響によって実地調査段階に進むことが難しかった。資料考察を基にした最終的な実地調査の段階のみ留保となった。
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今後の研究の推進方策 |
収集資料の検証内容をさらに整理し、まとめから得られる仮説に対する実地での検証を円滑に行う。本研究課題は、現実世界にある遺産保護という課題を取り扱うものであり、また重要な世界的アジェンダである支援、異なる者同士の連携という議論に関わっている。理論的焦点を明確にし、重要な現実的問題の考察に取り組む。
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