研究課題/領域番号 |
21K20079
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
新谷 春乃 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東南アジアII研究グループ, 研究員 (30791686)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | カンボジア / ナショナリズム / メディア / 言説分析 / 政治コミュニケーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1990年代以降のカンボジアにおけるナショナリズムの生成・再生産過程におけるメディアの役割を明らかにすることを目的としている。カンボジア人が情報収集する際に主に参照する新聞とインターネット上のニュースサイトやソーシャルネットワークサービス(SNS)を研究対象とし、①新聞・インターネットメディア上のナショナリズムに関わる言説分析、②メディアが置かれた政治的・社会的状況の分析、③メディアで流布されたナショナリズム言説の受容のされ方の分析を通して、現代カンボジアにおけるナショナリズムの生成・再生産過程においてメディアが果たしてきた役割を通時的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑み、国内で実施可能な研究として、分析資料の収集と1990年代以降のカンボジアにおけるメディアを取り巻く社会的・政治的状況に関する分析を進めた。その結果、マスメディア状況・言論環境、法規制、取り締まり事例の観点から1993年の立憲君主制への移行から2021年までを3つの時期区分(①1993~2005年、②2005年~2013年、③2013年~2021年)で整理することができた。 マスメディア状況・言論環境に関しては、全ての時期を通じて影響力の強いテレビやラジオは政権与党・人民党が掌握する傾向にあった。影響力が限定的であった新聞に関しては、非人民党系や独立系も活動が許容され、政治不満に対するガス抜きの役割も担っていた。インターネットは、利用者の増加と野党による政治利用を警戒し、規制が強化される中で自由な言論空間ではなくなった。 法規制に関しては、非人民党系野党に発言力があった①と②の時期は、言論統制につながるような法制度の制定には時間を要したり、頓挫する傾向が見られた。しかし、③の時期は、野党・救国党の躍進により、人民党がインターネット上の言論空間に対する脅威認識を強め、オンライン上の表現に対する法規制を断行する傾向が強まった。 メディアに対する取り締まり事例に関しては、全ての時期を通して、人民党にとって脅威となる非人民党系メディアを攻撃する傾向が見られる。ただしその手法は時間とともに変化しており、①の時期は司法攻撃もあったが、殺害も含む暴力的な攻撃が目立った。②の時期以降、殺害などの暴力的攻撃は激減し、司法攻撃中心になる。③の時期には独立系英字紙や欧米系ラジオ局の支局を閉鎖に追い込むなど、政権批判を展開するメディアへの司法攻撃が強化された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた国内出張ができなかったものの、初年度計画していた1990年代以降のカンボジアにおけるメディアを取り巻く社会的・政治的状況に関して研究を進めることができた。具体的には、上記のテーマに関連した資料収集・分析を行い、「1993年以後のカンボジアにおけるメディアの政治・社会的状況」というタイトルで日本カンボジア研究会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、第一に国内またはカンボジアにおいて資料収集を継続的に実施するとともに、1年目に実施が困難であった記者等、国家による規制の受け手に対するインタビュー調査をカンボジアでの現地調査またはオンラインツールを用いて実施できるか模索する。第二に、2年目に予定していた収集資料を言説分析した上で、学会・研究会で成果報告し、コメント等を得る機会を作る。第三に、1年目に進めた1990年代以降のカンボジアにおけるメディアを取り巻く社会的・政治的状況に関して論文形式での成果発表を目指す。
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