研究課題/領域番号 |
21K20083
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
石田 咲子 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 助教(特定雇用) (90801085)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 刑事政策 / 刑事司法と福祉 / 社会復帰支援 / 再犯防止 / 多機関連携 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、刑務所出所者等に対する社会復帰支援として、刑事司法と福祉の連携を踏まえた取組みが行われている。さらに、再犯防止推進計画によって、今後は国・地方公共団体・民間との多機関連携が不可欠となるが、地域社会での継続的な支援を行うには未だ課題が残る。本研究では、刑務所出所者等を刑事司法システムから社会福祉システムへとつなぐ仕組みに焦点を当て、多機関連携の仕組みを導入しているオランダの制度との比較法的考察を通じて、その実態を解明し、わが国においてどのように連携の仕組みを構築していくべきかを明らかにする。それにより、適正かつ有効な刑務所出所者等に対する社会復帰支援における多機関連携の展開可能性を示す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、刑務所出所者等を刑事司法システムから社会福祉システムへとつなぐ仕組みに焦点を当て、比較法的考察を通じて、わが国において適正かつ有効な社会復帰支援の展開可能性について検討し、再犯の課題を抱えているわが国において多機関連携の仕組みをどのように構築していくべきか、そのあり方についても明らかにしていくことにある。第2年度である令和4年度は、第1年度の研究実績を踏まえつつ、「エクソダス財団」を中心に、オランダにおいて刑務所出所者等に対する住居確保を実施しているアフターケア施設の取組みや仕組みについて資料の収集・内容の整理を継続して行った。具体的には、「エクソダス財団」をはじめとしたアフターケア施設に関する論文、報告書等を収集し、その資料の整理・分析を行った。その結果、刑務所出所者等の住居確保について、オランダのアフターケア施設特有の取組みとして、以下の点が明らかになった。 (1)近年、犯罪者処遇の分野でも注目されている強みにアプローチした支援(ストレングスモデル)や動機付け面接が展開されている。 (2)ガイダンスについては外来ガイダンスというかたちで、住居のある人あるいは施設を退所して自分の住居を見つけた人が通所して支援を受けることができる仕組みが整備されている。また、段階的な住居確保の取組みが行われている。 (3)アフターケア施設では、障害や依存症といった特定の問題を抱えた者や自治体の制度の枠組みで入所する者も受け入れている。また、アフターケア施設が刑務所出所者等を受け入れるルートとして自治体の枠組みがあるのは、オランダにおける自治体の責任や役割が大きく影響していることが明らかになった。 さらに、本年度は国際会議、国内学会及び国内研究会において研究によって得られた成果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度研究実施状況報告書作成時においては、令和4年度はオランダの関係機関を訪問し、オランダの実務家に対するインタビューといった実態調査を行うことを予定していたが、新型コロナウイルスに係る渡航制限により実態調査を実施することができなかった。この点については、現在までの達成度は「やや遅れている」と言える。しかし、その代わり本年度は、刑務所出所者等の再犯防止や社会復帰に大きな役割を果たしているアフターケア施設の取組みを昨年度よりもより広い範囲で整理・分析することができた。その結果、「セイフティ・ハウス」をはじめとしたオランダの多機関連携の仕組みの実態解明につなげる研究を実施することができた。さらに、国際会議、国内学会及び国内研究会において研究によって得られた成果を報告し、参加者と意見交換を行うことで日本との比較検討に向けて示唆を得ることができた。現在までの達成度は「やや遅れている」ものの、本年度の研究実績を踏まえて、令和5年度に実態調査を実施することで研究目的は達成できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度においては、第1年度及び第2年度の研究実績を踏まえつつ、とりわけオランダでの実態調査を実施することとする。具体的には、オランダの関係機関を訪問し、オランダの実務家に対するインタビューを行うことを予定している。また、多機関連携の仕組みの効果、その仕組みを可能にしている理由を明らかにするとともに、わが国における多機関連携の仕組みの構築のあり方を考察する。加えて、前年度に引き続き、研究成果を学会や研究会で報告するとともに、さらに令和5年度においては専門雑誌への論文の投稿を行い、広く社会に公表する。
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