研究課題/領域番号 |
21K20091
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
孫 友容 佐賀大学, 経済学部, 講師 (40905767)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 補償金スキーム / 著作権法 / 利益配分 / 著作者人格権 / 役割分担 / 補償金 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、情報通信技術の発達につれて著作物の利用形態が大きく変容する中で、著作権法において主流となっている「オール・オア・ナッシング」的な利益配分モデルが様々な問題に直面している現状において、私的録音録画補償金、授業目的公衆送信補償金、放送番組のインターネット同時配信に関する補償金等を代表とする著作権法上の補償金スキームについて、①制度論的研究を行い、著作物の利用をめぐる利益配分に対して果たしうる補完的役割を検討し、②政策論的研究を行い、特定の補償金スキームが成立する政策過程における各アクターの作用を分析することによって、③著作権法における利益配分モデルの政策決定のための理論構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究はこれまで、①著作権法における「オール・オア・ナッシング」的な利益配分モデルが、日常的に行われている著作物の利用行為に必要以上に違法性を帯びさせてしまうだけではなく、長期的には情報通信技術の発展またはその方向性にマイナスの影響を与える可能性もある、②これに対し、補償金スキームという利益配分モデルは、著作権法においてなおマイナーで例外的な存在ではあるものの、「オール・オア・ナッシング」的な利益配分モデルに対して補完的役割を果たすことができる、ということを指摘してきた。 2023年度は、補償金スキームの成立過程(公益アプローチとロビイングアプローチともに)にも少数派バイアスという著作権法の構造上の課題が存在することを念頭に置きながら、一つの切り口として、著作者人格権と著作権の役割分担に関する考察を行った。同考察を通じて、著作者人格権と著作権の役割分担に関する従来の理解は、立法趣旨の場面では説かれているものの、紛争解決の場面において全く考慮されないため、実際の人格的利益の損害がなくても、著作者人格権侵害を肯定しうる、という異様な状況を明らかにした。また、その異様な状況を指摘する際に、氏名を含む商標の登録の可否に関するマツモトキヨシ事件や直近の商標法改正と横方向的な比較を行い、前記の異様な状況を是正する試みとして、補償金スキームないし拡大集中許諾制度の著作者人格権への適用可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①著作権法における補償金スキームに関するこれまでの基礎的研究を踏まえた上で、本研究による知見を、リツイート事件を契機に議論が活発になっている著作者人格権に関する論点にも当てはめ、さらに、著作権との役割分担を念頭に置くことで、当初の研究計画には想定できなかった著作権法の構造上の課題解決にも寄与することができる可能性を見出した。のみならず、本研究の発展として、著作者人格権と著作権の役割分担に関する研究は、2024年度からの若手研究の研究課題として採択された。この点については、当初の計画以上進展しているということができる。 ②当初の研究計画の段階では、図書館等公衆送信用補償金という公益アプローチの補償金スキームについて、その運用実態を踏まえた考察を行う予定であったが、同制度の施行日が予想より遅かったことや、施行後の利用実態もやや不透明であることにより、考察が遅れていると言わざるを得ない。また、授業目的公衆送信補償金制度についても、授業目的という範囲が限定的であることによる教育現場に生じうる混乱は予想通りであったが、これらの混乱を解消するための実証研究もやや遅れている。 以上の2点を総合した結果として、おおむね順調に進展しているということができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの研究の集大成として、図書館等公衆送信用補償金や授業目的公衆送信補償金制度といった公益アプローチによって成立された補償金スキームに関する内容を充実させた上で、比較法による考察も含まれた論文を執筆し、公表する予定である。
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