研究課題/領域番号 |
21K20093
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大橋 エミ 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (20909717)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 債務引受 / 併存的債務引受 / 免責的債務引受 / 特定承継 / 債務の負担 / 保証 / 債務の設定 / 承継 / 債務の承継 / ドイツ民法 |
研究開始時の研究の概要 |
債務を引き受けることを内容とする契約については、様々な契約類型又は法制度が存在する。2017年の民法改正により新設された債務引受規定もまた、そのような内容を有する契約の1つとして位置づけられる。 本研究は、新規定の定める債務引受のうち、併存的債務引受について検討する。具体的には、契約当事者の意思と適切な債権債務関係の構築という視点から、ドイツ法を素材とした比較法的考察によって、併存的債務引受の生成過程を明らかにする。それは同時に、併存的債務引受と免責的債務引受の関係という問いを再検討することを意味する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、債務引受制度全体における免責的債務引受と併存的債務引受の位置づけを、比較法的考察によって明らかにすることにある。 2023年度は、営業譲渡と併存的債務引受の関係の検討を予定していた。19世紀ドイツ法においては、併存的債務引受概念それ自体が未確立であったところ、営業譲渡を手掛かりとして、同概念の生成過程の検討を開始した。考察の過程において、営業譲渡は、いわゆる債務負担行為としての併存的債務引受の事例ではなく、譲渡人が譲受人と共に併存的に責任を負う事例として整理すべきではないかとの考えに至った。また、ドイツ商法25条の定める営業譲渡は法律の規定に基づく譲受人の債務負担であって、免責的債務引受との対比で合意に基づく併存的債務引受概念の生成過程を解明しようとする本研究にとって、必ずしも適切な考察方法ではないことが明らかとなった。 そこで、2023年後後半は、信用担保としての併存的債務引受という観点から考察を行った。20世紀初頭にドイツにおいて確立した併存的債務引受によれば、加入者は、主債務者と連帯して責任を負うことになるが、どのような法的構成により両者が連帯債務の関係に立つのかという視点からの検討が、併存的債務引受概念の生成史の解明において求められることになる。2023年度後半は、この点について、主として文献による研究を行った。これらの内容については、2024年度にさらに分析・検討し、論文として公表する予定である。 その他、改正民法470条以下に規定された債務引受の法的性質に関する新たな理解と伝統的理解との相違にみられるように、より一般に、民法における伝統と革新の結びつきを究明するための幅広い知見を共有することを目的として、ユルゲン・バーゼドー(著)大橋エミ(訳)「社会の変遷における国際私法の任務と方法の多様性」島大法学67巻1・2号117頁以下を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
【研究実績の概要】で示したように、営業譲渡を一事例として併存的債務引受概念の生成過程を解明するという2023年度当初の予定は、免責的債務引受と併存的債務引受の両法制度の関係を整理するという本研究との目的との関係において、変更せざるを得なくなった。そのため、2023年度後半以降は、当初に予定していた営業譲渡と併存的債務引受の関係性について考察するのではなく、信用担保の1つとしての併存的債務引受という観点からあらためて検討する必要があり、併存的債務引受の生成過程に関する考察を十分に行うことができなかった。 本研究に必要となった新たな資料については、その大部分の収集をすでに終えているため、2024年度は、それらの分析・考察を中心に研究を遂行し、本研究の目的である併存的債務引受という法制度の生成史を明らかにすることが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】及び【現在までの進捗状況】で示したように、2024年度は、信用担保という視点から、併存的債務引受についてドイツ法の文献を分析・考察する。併存的債務引受に関する学説は、ドイツ民法典において保証の書面性が規定されたことを契機として、その都度の取引の要求に応じて展開され、通説が形成された。そのため、取引に対応するための法的技術という併存的債務引受の役割を意識しながら、当時の学説及び判例についての批判的検討を行い、その成果を論文として公表することを予定している。
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