研究課題/領域番号 |
21K20178
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
王 文潔 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 助教 (10913270)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 潜在的被災者 / 共感困難 / 支援体制 / 豪雨災害 / 在宅被災者 / 生活再建 / 災害ケースマネジメント / ボランティアネットワーク / 復興 / みなし仮設 / 地域ネットワーク / ボランティア / 地域支え合いセンター / 支援格差 / 市民エージェント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は社会的に注目度が低く、支援のノウハウが顕在化してこなかった「潜在的被災者」(みなし仮設被災者、在宅被災者、被害が少ない地域の被災者など)に対して、市民エージェントがなぜ、いかにして支援を行うのかを明らかにすることである。従来の研究では「災害弱者」などの概念で災害時の要支援者の問題が議論されてきた。しかし熊本地震後のみなし仮設住宅の主流化及び災害の頻発による、表面化しない被災者の増加と支援の窮状は看過できない。本研究は被災地を超えた多様な市民エージェントによる潜在的被災者への支援の実態を明らかにするとともに、潜在的被災者が発生する社会構造要因の解明と有効な支援方策を探求する。
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研究実績の概要 |
今年度は主に令和2年7月豪雨で被災した久留米市、令和3年7月秋田豪雨で被災した秋田市におけるフィールド調査および、市民団体の関係者へのインタビュー調査を実施した。以下の3点を中心に研究を進めた。 1)潜在的被災者を支援対象とする市民団体の存続戦略について情報収集と分析を行った。フィールド調査とインタビューを通して、市民団体の継続的な活動の中で確立された、被災者への個別訪問からアフターケアにつなげる心得、ボランティアスタッフを確保するための他団体との連携体制など、他の被災地でも応用可能な知見を得た。 2)これまでの調査で蓄積してきた事例を分析し、支援者にとって潜在的被災者の被災者性および支援必要性への共感がどのような場面、経路で形成されるのかを類型化し考察した。多層的かつ錯綜した様相に覆い隠されている潜在的被災者に対して、他の被災者や支援者からは「支援する必要があるのか」という共感困難さが呈されている。このような潜在的被災者への支援には、キーパーソンや共有する場など共感を醸成する経路が有効であることを明らかにした。 3)被災地域内外の支援者・支援団体の関係構築について宮城、熊本、秋田での事例を用いて検討した。被災地の既存市民団体が平常業務と災害支援を両立させる上での課題、ならびに被災地外部の支援者による被災地の住民や行政との関係性づくりに関する追加調査を行った。その結果、よそ者による伴走という関わり方に加え、潜在的被災者への日常的な支援体制づくりにおける外部支援者の立ち位置を捉えることができた。 以上の研究成果を学会で報告するとともに、市民向けの講演会やセミナーにおいて広く成果を発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた現地調査が一部実施できなかったものの、上記研究の2)、3)ではこれまで蓄積してきた複数の地域での事例を比較・分析し研究を発展させた。また1)に関してはこれまでの研究によって、市民団体による潜在的被災者へのアプローチが困難であること、行政職員、弁護士などと連携して生活再建を支援するノウハウが顕在化してこないこと、さらには安定した運営資金と人員体制を維持しづらいといった課題が明らかにされた。今年度は被災者宅での清掃作業や訪問調査に同行し、これらの課題について市民団体の職員が現場で苦悩や葛藤を抱えながらも模索し続けるプロセスを追うことができた。こうした研究を継続する中で、本研究課題と問題意識を共有する実践者・研究者とのネットワークを広げ、学術的・実践的な議論ができる関係構築が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年能登半島地震の発生に伴い、調査対象である市民団体が新たな被災地での支援活動を展開している。こうした動きに注目しつつ、今年度で進展させた3つの研究成果を検証し、潜在的被災者への支援の実態と有効な支援方策に関する研究成果の発信に努める。
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