研究課題/領域番号 |
21K20193
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 芸術文化観光専門職大学 |
研究代表者 |
高橋 加織 芸術文化観光専門職大学, 芸術文化・観光学部, 助教 (90912303)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 国際移動 / 女性労働 / ジェンダー / ホテル / 現地採用 / パンデミック |
研究開始時の研究の概要 |
1990年代半ば以降、アジアで働く日本人女性は増加傾向にある。彼女たちは現地採用と呼ばれ、給与、社会保障などは現地ベースに準拠する。 中でも衣食住が提供されるホテル業は、海外就労を目指す女性に定評がある。ところが、パンデミックの国境閉鎖に伴い、解雇を迫られ帰国せざるを得ない女性が急増している。彼女たちは職を失う上、日本で生活基盤を一から築き上げなければならない。帰国後、これまでの経験を活かし、ホテル業への再就職が予想される。彼女たちは帰国後の再就職でどのように生活基盤を立て直しているのか。 本研究は、パンデミック禍で帰国した女性たちの差し迫った移動と存在の経験について、ジェンダー視点からとらえていく。
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研究実績の概要 |
2022年度は、 研究計画に基づきパンデミックの影響で帰国を強いられた女性たちは、日本への移動と生存をどのように経験しているのか(日本における生活基盤の再構築、就職活動、失業保険や生活保護などのアクセス)について帰国者の女性たちへのインタビュー調査を行う予定であった。当該者へのインタビュー調査を2022年1月から6月まで行う予定であったが、COVID-19の影響によりインタビュー調査を行うことが難しい状況にあった。2021年度の予備調査では、2名の調査対象者を把握したものの、2022年度にインタビュー調査を行えたのは、その内の1名であった。また、2022年7月から2022年9月まで、再就職先の上司や同僚などへの聞き取り調査を行う予定であったが、同じくCOVID-19の影響により、実際にインタビュー調査を行うことができた調査対象者は、1名であった。 インタビュー調査を行った現地採用の日本人女性にとって、COVID-19のなかでの帰国は、平常時の帰国に比べ、さまざまなハードルが待ち構えていた。なかでも帰国時の自主隔離期間は、困難を極めた。COVID-19のパンデミックにより帰国が叶わず、数年ぶりの帰国であり、本来であれば直ちに家族や友人との再会を果たすものの、隔離生活を余儀なくされていた。 また、彼女たちは、海外での生活が長期にわたったため、日本での生活基盤をほとんど失っていた。このような状況下において、新居の準備および携帯電話の契約など、彼女たちが日常生活を取り戻すためには、ある程度の時間を要することが明らかとなった。 2022年に入り、外国人出張者および観光客の受け入れを再開した国々もアジアのなかにみられた。2022年12月に行ったマレーシアにおける電話調査では、クアララルンプール大都市圏のホテルにおいて、新たに日本人女性を採用したホテルは、管見の限りなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響によりインタビュー調査の実施が難しかった。したがって、2022年度は、現地採用の日本人に関する先行研究の検討およびCOVID-19に関するデータの整理を行った。 これまでの予備調査において、現地採用として海外のホテルに従事する日本人スタッフは、日本人顧客の集中するエリアに留まると同時に、数百室規模のホテルに若干名と限定的であることがわかっている。調査対象者は、個人を特定されやすいため、インタビュー調査を断られることもあった。このような状況から2022年度のインタビュー調査は、遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、「パンデミックの影響で、帰国を強いられた彼女たちは、日本への移動と生存をどのように経験しているのか」について、インタビュー調査を行う予定である。日本における生活基盤の再構築は、どのように行われたのか。日本での就職活動は、どのようなものであったか。彼女たちの今後の展望などについて、調査を行いたい。 2023年における日本の観光業は、COVID-19パンデミック前の状況に戻りつつある。このような状況下において、日本では、インバウンドを目的としたホテルの新規開業が続いている。これらのホテルにおいて、現地採用経験者である日本人女性たちが再就職している可能性が高い。 したがって、2023年度は、調査対象地域を拡大したい。2022年度の予定は、札幌、東京、横浜、千葉、名古屋、京都、大阪、福岡、沖縄であったが、その他のインバウンドが好調な都市も調査対象地域とし、インタビュー調査対象者を募る予定である。 また、世界各国においてCOVID-19の「緊急事態宣言」終了が発表される状況下において、インタビュー調査対象者のなかには、元の職場や他国の現地採用として再び海外での勤務を開始している者も想定される。これらの点も踏まえて、フィールドワーク調査を行いたい。 研究成果は、2023年度日本観光研究学会口頭発表後、芸術文化観光専門職大学「芸術文化観光学研究(紀要)」へ投稿したい。
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