研究課題/領域番号 |
21K20203
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
田村 美由紀 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (60907054)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 口述筆記 / 中途障害 / ケア / ジェンダー / 身体 / 上林暁 / 三浦綾子 / 大庭みな子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、中途障害(病気の後遺症による手指の麻痺や書痙、視力の低下など)を抱え、自ら筆を執って書くことに困難を極めた作家たちが、口述筆記という書字を他者に代行させる方法で創作活動を継続させたことに焦点を当てる。上林暁・三浦綾子・大庭みな子という三人の作家を具体的事例に取り上げ、障害学の視点から口述筆記による創作の実態を解明する。これらの作業を通じて、作家たちの中途障害との向き合い方や、口述者(被介助者)と筆記者(介助者)との関係性を、摩擦や軋轢といった側面も含めて多面的に浮き彫りにするとともに、口述筆記というケアの営みにおいて身体的な協働性がどのように構築されているのかを明らかにする。
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研究成果の概要 |
本研究では、中途障害を抱えたことにより執筆の行為に困難をきたした日本の近現代の作家たちが、他者の介助による口述筆記という方法によってどのように創作活動を継続させたのかを、上林暁、三浦綾子、大庭みな子という三人の作家を分析対象に取り上げ、具体例に即して考察した。 小説や随筆、日記、筆記者の証言などを横断的に読み解き、書く行為を代行する筆記者と作家との関係を障害学やケア論の観点から分析することで、書けないことが作家のアイデンティティに与える影響と、書く行為を介助する/される関係のなかで身体的な協働性がどのように構築されているのかを検証し、作家を取り巻く複雑なケア労働の様相を明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、障害やケアの視点から口述筆記という創作手法を再検討することで、作家(口述者)と筆記者という関係性だけにはとどまらない、介助する者と介助される者とのケア関係の諸相を明らかにした。文学創作の場における執筆形態の一つとしてしか扱われてこなかった口述筆記の介助的側面に光をあて、文学研究と障害学の知見を従来とは異なる視点から架橋したという点において学術的意義を有している。 また本研究の成果を、芸術制作をめぐる労働の問題に敷衍することによって、これまで芸術制作の分野で周縁化されてきた感情労働・ケア労働の担い手たちの参与をどのように掬い取ることが可能かという論点にも接続し得る点に社会的意義がある。
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