研究課題/領域番号 |
21K20238
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
山本 弥生 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (30909148)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 時間情報 / 語音聴取能 / VOT識別課題 / 語音明瞭度 / 語音聴取 |
研究開始時の研究の概要 |
語音明瞭度良好な聴覚障害児者においても、日常での言葉の聞き取りに困難を訴える例は多い。従来言葉の聞き取りは、時間分解能と呼ばれる音の時間情報を処理する能力との相関が高いと考えられている。語音の時間情報を識別する課題として、有声および無声子音を用いたVOT(Voice onset time)識別課題があるが、語音明瞭度が良好な聴覚障害児者においてもVOT識別は不良な例が存在する。VOT識別成績が、言葉の聞き取りのどの側面を反映しているかは不明な点が多い。そこで本研究では聴覚障害児に対してVOT識別課題を実施し、静寂下だけでなく雑音負荷条件での語音聴取成績と、範疇化成績との関連について検討する。
|
研究実績の概要 |
聴力正常の小児から高齢者まで、VOT(Voice onset time)識別課題を広く適応することができた。特に高齢者において、VOTの正確な識別にはわずかな聴力低下も範疇化成績に影響を及ぼすことが明らかとなった。またこのわずかな聴力低下は、雑音下での語音聴取にも関与していた。 高齢者では、雑音下での語音聴取能と平均聴力レベルに相関がみられた一方で、聴力には問題が見られない場合にも、VOT識別課題でみるカテゴリー知覚には個人差を認めた。特に平均聴力レベルを20dBHL以内の高齢者と設定した場合にも、10~20代の若年者では範疇化が100%可能であるのに対して、聴力は若年者と同等にも関わらず、高齢者では範疇化不良例が存在した。 高齢者は、平均聴力レベル以上に言葉の聞き取りにくさを訴える例が多いと言われる。VOT識別のような時間分解能の処理は、平均聴力レベルでは説明できない言葉の聞き取りにくさを捉えている可能性が示唆された。しかし聴力正常高齢者の範疇化成績と語音明瞭度検査結果とで、相関がみられていないため、範疇化成績がどのような聴取場面に関与するかを明らかにする必要がある。 また小児のデータ収取では、健聴学齢児を対象とした。低学年児では課題への集中度が結果に影響を及ぼす傾向が見られた。しかし高学年児においても、集中度の問題はないにも関わらず、発達検査で発達障害の傾向を有する者や、聴力正常でも聞こえにくさを訴える例の中には、範疇化不良となる例が多かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
範疇化成績は、不完全な音響情報を正確に判断し聞き取る必要がある課題である。そのため範疇化成績は、雑音下での不十分な音響情報の聴取能を反映する可能性が高いと考え検討を進めてきた。しかしながらデータ収集を重ねる中で、高齢者において両者の関係には相関がみられないということが明らかとなった。範疇化成績は出来る、出来ない、と成績の個人差が明確に現れる課題であるが、この個人差が何を捉えるかについて、調査を進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
聴力が正常な場合にも高齢者では範疇化不良例が存在した。しかし雑音下での語音聴取とは明らかな相関が見られず、どのような聴取場面を範疇化成績が反映しているかについて、さらに検討を進める必要がある。 また小児においても同様で、低年齢児では課題への集中度など年齢の影響を受けて成績が不良となる例が存在するが、学齢期である小学校高学年児以降でも範疇化成績は個人差が見えやすい。 小児においても高齢者においても、これらの個人差が特定の場面での聞こえを反映する聴取特性であるか、または方略による違いかについて、いくつかの聴取状況を設定した聴取課題を実施することで、明らかにしていく。
|