研究課題/領域番号 |
21K20251
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 都留文科大学 (2023) 山梨学院短期大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
相田 まり 都留文科大学, 文学部, 非常勤講師 (10910234)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 保育思想 / 戦後日本 / 羽仁説子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、戦前・戦後を通じて保育に携わり、子どもの権利や平和を守る活動に尽力した羽仁説子の思想の検討を通じて、「子どもの自由や主体性を尊重する」という保育の基本的な思想を再検討するものである。 保育者の思惑から子どもを解放し子どもの自由や主体性を尊重すべきであるという考えは、日本では明治後期から大正期に形成されたものであるが、戦後も根本的な見直しを図られないまま現在に至っている。本研究では、文献の読解や関係者へのインタビュー調査を通じて羽仁説子の保育思想を検討し、日本の保育において、戦前と戦後で何が引き継がれ、何が変化してきたのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、羽仁説子(1903-1987)の思想の検討を通じて「子どもの自由や主体性を尊重する」という保育の基本的な思想を再検討するものである。本年度は、昨年度までの研究成果を踏まえた上で、説子の戦前・戦後における一連の活動の内容とそれらの背景にある思想を検討した。その結果、次のことが明らかになった。 ①説子の保育者としての原点には、学生時代に関東大震災被災地で目の当たりにした貧しい人々の暮らしや社会主義思想との出会い、自身の長女を幼くして病気で亡くした経験などがあった。これらの経験は、「よい生活者」を育てることを目的とした自由学園幼児生活団(1939- )の活動へと結実した。 ②羽仁もと子の長女として『婦人之友』や自由学園の活動に携わっていた説子は、戦時中、大政翼賛会調査委員会の委員や大日本婦人会の常任理事などを務めることになる。しかし、説子は戦争を肯定していた訳ではなく、戦後は戦争によって多くの子どもたちが犠牲になったことへの強い反省から、「民主保育連盟」や「日本子どもを守る会」での活動、またベトナム反戦運動などへの参加を通じて、子どもの人権と平和を守る活動に尽力した。これは、説子の思想形成に強い影響を与えた母・もと子が、戦後も戦時中の主張――「家族日本」をつくり上げることによって日本という国家をますます発展させることができる――を堅持し続けたことと対照的である。 上記②のもと子と説子の対比は、戦前・戦中の新教育との影響関係をみる上でも重要な視点の一つであると考えられる。今後はこの点も含めて、本研究の課題に取り組んでいきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務校での業務(授業準備等)に時間がかかり、予定していた研究の時間が取れなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は以下の通りである。 ①文献の収集・読解:引き続き、文献の収集・読解を進める。特に、母・もと子の思想との相違や、当時の保育・教育思想や社会状況から受けていた影響などについて検討する。 ②関係者へのインタビュー:婦人之友社や日本子どもを守る会など、説子と関係のあった人物を訪ね、彼女の思想や実践について、また当時の状況について、インタビュー調査を行う。 ③保育現場の視察:戦前に確立された「子どもの自由や主体性を尊重する」という保育の基本的な思想が、時代の変化を経てどのように引き継がれているのかを知るため、各地の保育園・幼稚園・こども園を訪問し、視察する。 以上を通して、説子の保育思想の全体像、特に戦前・戦後のつながり(あるいは変化)を明らかにするとともに、現在の保育に与えている影響について考察する。また、これらをまとめて論文を執筆し、学会への投稿を目指す。
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