研究課題/領域番号 |
21K20289
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0110:心理学およびその関連分野
|
研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
小林 亮太 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (50911442)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 感情制御 / ネガティブ感情 / 不安 / 認知的再評価 / 感情 |
研究開始時の研究の概要 |
再評価とは物事を別の観点から捉え直すことにより,不安などのネガティブな感情を低減する感情制御方略である。この再評価については,これまでに精神的健康の促進など数多くのメリットが報告され,臨床や教育現場で利用されてきた。これに対して本研究では,ネガティブ感情の脅威状況への準備を動機づける機能 (e.g., 不安だから発表準備する) を踏まえ,再評価にはデメリットも存在する可能性について検討する。具体的には,実験室実験 (研究1),および経験サンプリング調査 (研究2) を行うことで,再評価に「準備の減少」というデメリットがあるのかを明らかにすることを目的とする。
|
研究実績の概要 |
再評価とは,感情やその原因となった出来事を別の観点から捉え直したり,新たな解釈を加えたりすることにより,感情の調整を試みる方略である。再評価はネガティブ感情の低減に有用な感情制御の1つであり,精神的健康を良好に維持する上で重要な方略と考えられている。しかし,近年になり再評価にもデメリットがあるのではないかという議論がなされるようになった。ネガティブ感情は確かに不快で嫌な感情であるものの,その状況が本人にとって重要であることや,脅威が迫っていること,あるいは良い環境ではないことなどを伝えるシグナルの機能を担っていると考えられている。そのため,ネガティブ感情を減らしてしまうということはそうしたシグナルを弱めてしまうことに繋がるため,ネガティブ感情が喚起された状況への対応や反応に遅延や不備が生じてしまう可能性が高まる。本研究では,ネガティブ感情の1つであり,再評価の対象にされることの多い「不安」に焦点を当て,こうした再評価のデメリットが生じるか検討を行った。オンライン上で不安を喚起するシナリオを提示した上で,参加者の半数には再評価を,残り半数には統制課題に取り組むように求めた。その後,不安喚起シナリオに対する「対策・準備」の程度を尋ねた。結果として,再評価をすることで先行研究と同様に不安は低減したものの,それに伴い対策・準備が減少するというデメリットは確認できなかった。ただし,不安の減少量と準備の程度などに相関関係が認められた。今後は不安を実験的に喚起するといった手続きを用い,再評価のデメリットについて検討を進めて行く。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響もあり,研究は予定ほど順調に進んでいない。当初は不安を実験的に喚起・測定する研究計画であったものの,機材トラブルなどもあったため,研究計画を部分的に修正し,シナリオ法を用いて研究を進めた。研究成果については2023年度のEuropean Society for Cognitive Psychologyにて発表予定であり,国内誌に投稿する予定である。今後機材トラブルが解決し次第,当初の予定通りの実験も遂行していく。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの研究の結果,再評価にはデメリットがない,あるいは少ない可能性が示唆されている。こうした結果は,再評価のデメリットを怒り感情に焦点を当てて示した先行研究と一致しない。しかしそうした先行研究との差異が,研究手続きの差異によるものなのか,文化の違いによるものなのかの判断が難しい。そのため,先行研究の追試を行うことから検討している。また,先行研究含め感情の測定は主観的な報告によってなされている。この測定方法には回答バイアスなどが影響し,また意識できない感情の変化の測定が難しいという問題点が存在する。そのため,今後はまず,感情を実験的に喚起し,その感情を生理指標で測定する研究を実施していく予定である。
|