研究課題/領域番号 |
21K20304
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0110:心理学およびその関連分野
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
山本 晶友 上智大学, 総合人間科学部, 研究員 (30908851)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | 感謝 / 道徳 / 不正 / 嘘 |
研究開始時の研究の概要 |
感謝という感情には,感謝の体験者と対象者がどちらも利他的になるなどの道徳性向上の機能と,両者が親密になれる関係強固化の機能がある。原則この二つの機能は支え合っている。しかし,感謝対象者が不正を行った時に,関係性を重視するあまりその不正を匿う嘘を感謝体験者がついてしまうならば,組織や社会の秩序を棄損する非道徳的行動が,感謝により生じていることを意味する。本研究ではこのように感謝体験者が感謝対象者の不正を匿う嘘をつく現象が起こるかを複数の手法で検討する。さらに,不正を匿うという行為を感謝の気持ちから行う者に対して,第三者が肯定的に評価する可能性も検討し,社会的文脈の中のフィードバック構造も探る。
|
研究成果の概要 |
本研究ではまず,感謝体験者が感謝対象者の不正を匿う嘘をつくかを検討した。行動実験とその場面想定型実験の結果では,そのような嘘をつきやすくなるとはいえなかった。そこで指標を抽象化し「感謝対象者の損失回避のために第三者を犠牲にする程度」を検討した。その結果,感謝を感じやすいシナリオを読んだ群は,感謝対象者の損失回避のために第三者を犠牲にする傾向があった。さらに本研究では,感謝対象者の不正を匿う感謝体験者に対する,第三者からの評価を検討した。2件のシナリオ実験の結果,感謝対象者の不正を匿う感謝体験者に対して「この人物とは互恵関係を構築できそうだ」という肯定的な評価が生じやすいことが示唆された。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は,感謝体験者がある種の他者犠牲をしてでも感謝対象者を守ろうとする可能性や,それに対する第三者からの評価が肯定的になる可能性を示した。この知見は,向社会性の向上や良好な関係構築の機能など,感謝のポジティブな側面ばかりが着目される従来の研究動向に対し,検討課題の拡張を促す学術的意義がある。また,感謝を金科玉条とする教育の風潮に対し,行動科学の観点から警鐘を鳴らしうるという社会的意義がある。
|