研究課題/領域番号 |
21K20341
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
石井 裕太 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 助教 (20912223)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 反応拡散方程式 / パターン形成 / メトリックグラフ / Gierer-Meinhardtモデル / Schnakenbergモデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では生物の形態形成に関するGierer-Meinhardtモデルについて、ピーク解と呼ばれる物質の凝集現象を表した定常解の解析を行う。従来の研究と大きく異なる点はメトリックグラフと呼ばれる複数の線分をつなぎ合わせた1次元的な複雑領域で解析する点である。本研究では領域の幾何構造と変数係数として表現された環境効果によるピークの位置と安定性への影響について考察し、厳密な数学解析を通じて現象に対する理解を深化させる。
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研究実績の概要 |
本年度は生物の形態形成に関するGierer-Meinhardtモデル(GMモデル)と自己触媒反応に関するSchnakenbergモデル(SCモデル)について、ピーク形状を持つ定常解であるピーク解に対する移流効果による影響の解析をY字グラフ上で行った。多重ピーク解の構成と線形安定性に関する定理の構築を目指して解析に取り組み、今回、1ピーク解の構成に関する抽象定理の結果が得られた。特に、グラフの頂点条件の選択、移流速度、グラフの形状の3つの効果によって、ピークの位置が境界方向または接合点へシフトすることが分かった。更に、ピークの位置がシフトする方向について、SCモデルでは移流速度の大きさが影響し、GMモデルでは移流速度の符号が影響するというモデル間の現象の違いも分かった。ピークの位置と高さはモデル方程式に付随するグリーン関数によって記述されるが、一般的にグリーン関数の計算は難しいとされている。一方で、Y字グラフのような比較的に単純なグラフであればグリーン関数の計算が可能なため、今回の研究ではピークの位置と高さに関する式を明示的に与えることができた。また、空間非一様な係数を持つモデルでの多重ピーク解の解析が本研究課題の中で行われているため、その手法と今回の移流項を持つモデルに対する手法を合わせることで多重ピーク解の構成と安定性の解析も期待できる。SCモデルに関する結果は単著論文として国際学術雑誌へ掲載された。また、GMモデルについては、現在、単著論文として国際学術雑誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは空間非一様な係数を持つモデルを中心とした解析に取り組み、一定の成果が得られた。今回、その解析手法を移流項を持つモデルに応用し、SCモデルとGMモデルでY字グラフ上の1ピーク解の構成に関する結果を得られた。特に、それぞれでピークの位置と高さに関する式を明示的に与え、グラフの頂点条件の選択、移流速度、グラフの形状による効果を詳細に捉え、モデル間で現象に関する違いが現れた点が特筆すべき点である。また、GMモデルについては、1次元区間ですら同様の研究が行われていない点も特筆すべき点である。
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今後の研究の推進方策 |
今回の移流項を持つモデルに対する解析と空間非一様な係数を持つモデルの解析の方法を組み合わせることで、Y字グラフ上で移流項を持つモデルに対する多重ピーク解の構成と安定性に関する解析に取り組む。
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