研究課題/領域番号 |
21K20371
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大下 翔誉 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 基礎科学特別研究員 (50911632)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 真空崩壊 / 宇宙論 / ブラックホール / 重力 / 経路積分 / 素粒子論 / 場の量子論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、特にヒッグス場に対して予言されている真空の不安定性に伴う真空崩壊と言う現象の基礎研究を行う。真空崩壊の理解を通して、宇宙の歴史や物質の起源に対する理解の促進を目的とする。ここで真空の不安定性とは、宇宙を満たす物質場の現状態よりもさらに安定な状態が存在していることを指しており、この場合には、ゼロでない確率でより安定な状態への相転移(真空崩壊)が起き得る。その確率は、素粒子模型や初期宇宙模型のパラメーター、そして真空崩壊の基礎理論に基づいて決定される。現在の宇宙に至るまで真空崩壊が起きていないと言う事実から、パラメーターへの制限及び理論の正当性の評価を行うことが本研究の方針である。
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研究成果の概要 |
宇宙論および素粒子論で重要な現象の1つである真空崩壊の研究に取り組み、主に3つの研究成果を得た。(i)従来まで用いられてきたユークリッド経路積分を超えた手法として、ローレンツ経路積分による真空泡生成率の計算を提案し、ユークリッド経路積分の結果と一貫する結論を導いた。(ii)また、Wheeler-DeWitt方程式を用いて、従来まで知られていた典型的な真空泡の生成率の値よりも大きな生成率を導く相転移過程を数値的に導いた。(iii)超弦理論と一貫性のある高次元AdS時空に、ブラックホールのような非一様な成分が存在しても、4次元膨張宇宙を模倣する真空泡の生成が可能であることを理論的に検証した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究成果は、宇宙誕生直後などの初期宇宙において重要となる真空の安定性の理解に貢献する。従来まで用いられた真空崩壊率の計算法であるユークリッド経路積分には、幾らか問題点が指摘されており、それらを克服する新たな計算法の確立の第一歩となる研究成果である。また、素粒子論と重力理論を統合し得る有力な理論として超弦理論が知られているが、この理論では、我々の宇宙のように膨張する時空を包含し難いという性質が知られている。超弦理論で許される高次元空間が非一様な場合でも、そこで生成した真空泡の膨張が我々の宇宙の膨張を模倣することから、異なるスケールの物理が、一貫性を持ってこの宇宙を記述し得る理論的傍証も示した。
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