研究課題/領域番号 |
21K20375
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊地知 敬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30906128)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 二重拡散対流 / ソルトフィンガー / パラメタリゼーション / 南極底層水 / 貫入現象 |
研究開始時の研究の概要 |
南極海では、近年の地球温暖化の影響が顕在化している。それに伴って、深層海洋大循環の大動脈である、南極大陸沿岸から世界大洋の底層に広がった南極底層水にも変化がもたらされつつある。しかしながら、南極沿岸で形成された底層水が外洋域へどのように広がっていくのか、という将来の深海環境の変化を把握する上で重要な問題が未解明のまま残されている。本研究では、南極沿岸と外洋の移行域で観測された二重拡散対流に伴う貫入現象に着目し、それが底層水の遷移過程に果たす役割を数値実験によって明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、二重拡散貫入を数値計算で再現する上でパラメータ化する必要がある二重拡散対流に伴う渦フラックスがどのように規定されるのかを、二重拡散対流の一種であるソルトフィンガーが卓越する北大西洋中緯度の海面塩分極大域で海中グライダーと鉛直乱流プロファイラーによって取得された既存の乱流観測データを使って検証した。二重拡散対流に伴う水温・塩分フラックスは、いくつかの仮定の下で、観測で得られた水温分散散逸率と乱流運動エネルギー散逸率とから見積もることができる。浮力レイノルズ数が十分小さく乱流が活発でない場合、こうして見積もられた水温・塩分フラックスには、水温・塩分成層比Rρに対する顕著な依存性があり、特にソルトフィンガーが卓越すると考えられる1 < Rρ < 2でフラックスが強化される様子が見られた。この結果は、リチャードソン数が十分大きい場合に得られた先行研究の結果と整合的であり、十分な精度で観測することが通常困難なリチャードソン数の代わりに浮力レイノルズ数を使ってもソルトフィンガーに伴うフッラクスを定量化できることが明らかになった。また、上記のソルトフィンガーが卓越するパラメータの範囲で、水温勾配の波数スペクトルの傾きが、過去の限られた観測や理論で指摘された正の大きな値より十分に小さく、正負が逆転してしまう場合もあることが分かった。これは、ソルトフィンガーに関わるエネルギーカスケード過程に新たな示唆を与えるもので、興味深い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時の予定では、観測された貫入層やその背景場の特徴を把握した上で、貫入再現実験に着手することになっていた。その一方で、限られた観測から貫入を説明するために不可欠な要素を絞り込むことができず、数値実験の着手に遅れが生じてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた観測データの解析結果をまとめて、国際誌に投稿する。その後、今回検証した二重拡散対流に伴う渦フラックスのパラメータ依存性を組み込んだ上で、貫入層が観測された顕著なフロント域を対象とした数値実験を行い、観測された貫入層を説明するのに不可欠な要素を絞り込んでいきたい。
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