研究課題/領域番号 |
21K20385
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
冨永 遼佑 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (10908338)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 原始惑星系円盤 / ダスト / 微惑星 / 流体不安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の高解像度観測により,微惑星・惑星の形成現場である原始惑星系円盤の詳細な構造が明らかになりつつある.特に,惑星の素となるダストが多重のリング状に分布していることが明らかになり,その起源解明は微惑星・惑星形成過程の解明に重要であると示唆される.本研究では原始惑星系円盤の不安定性に着目し,リング形成・微惑星形成を複数の不安定性による一連の時間発展過程と捉え統一的解明を目指す.特にダストの衝突成長が駆動する不安定性を数値シミュレーションで調べ,従来の理論と包括することで微惑星形成過程の解明を目指す.
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研究実績の概要 |
惑星の形成過程は未だ解明されていない.従来理論では,原始惑星系円盤に含まれる固体微粒子(ダスト)が合体成長し,キロメートルサイズの微惑星を形成した後に惑星ができると考えられている.この過程の中で,微惑星の形成が困難であるとわかっており,盛んに研究されている.本研究は,ダスト成長が駆動する新しい不安定性(coagulation instability)に注目し,それに基づくダスト成長・微惑星形成を明らかにすることを目指す.
当該年度はまずcoagulation instabilityの非線形シミュレーションを行った研究を2本の論文としてまとめ,出版した.この研究では不安定性によるダスト濃集が,微惑星形成の困難であったダスト落下問題と衝突破壊問題の両方を解決できる可能性を示すものである.さらにダスト濃集後に起こる永年重力不安定性について多次元解析を行い微惑星形成への発展条件を精査し,論文1編を新たに投稿した.また非線形計算をもとに電波帯での円盤輻射場の時間進化を調べた.ミリ波・サブミリ波の輻射場にできるリング構造の幅はガススケールハイト程度以下でありビームによる平滑化の影響を強く受けることがわかった.またダストの濃集は起こる一方,サイズも大きくなるためリングは光学的に薄いということがわかった.このようなリング形成は短い時間で起こるため,微惑星形成後の衝突破片放出を考慮することが重要になる.数値実験に基づく簡易モデルから,微惑星質量の数パーセントを破片として再放出できれば観測されている円盤の明るさを説明できるとわかった.
ダストサイズ分布を考慮した数値計算にも取り組んだ.当該年度はまず高次空間精度のコードを作成し,いくつかのパラメータでcoagualation instabilityの調査を試みた.現状の限定的な計算ではサイズ分布の影響で短波長モードが安定化することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は論文2編の出版に加え,永年重力不安定性の多次元解析についての論文も執筆し投稿した.また輻射計算を行い微惑星形成後の破片放出過程が重要であるという示唆も得ることができた.しかし当初予定していたダストサイズ分布を考慮したcoagulation instabilityの研究では,網羅的な数値実験と物理的理解にまだ至っていないため,やや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きダストサイズ分布を考慮したcoagulation instabilityの計算に取り組む.特にcoagulation instabilityが成長可能な波長を数値実験で求め,その起源を物理的に理解する.時間発展を簡潔に理解するために,動径方向に対して局所的な座標系で数値計算を行うが,成長率の波長依存性が解明できればその結果をもとに大局的な計算も行う.最終的には従来の代表サイズ計算と比較し,ダスト濃集度と成長効率がダストサイズ分布によってどの程度変化するかを定量的に明らかにする.またダストサイズ分布入りの数値計算と並行して,当初予定していた多次元空間での時間発展を調べるためのコード開発も進める.
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