研究課題
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近年、細胞質内に局在する抗原やタンパク質と結合する細胞内抗体医薬は細胞死や免疫誘導できることから、新たな治療分子として注目されている。しかしながら、これら抗体の細胞質への移行量は極めて低く、十分な活性が発揮されず、医薬品としての利用が困難である。そこで、抗体の活性を飛躍的に向上させ革新的な抗体医薬品を創出することを目指し、ナノテクノロジー技術を基盤とした新規薬物送達システムの構築を検討する。具体的には、薬物送達システム構成材料の合成、細胞実験、動物実験での評価を実施し、コンセント確立を図る。
細胞質内抗原と結合する細胞内抗体は細胞死などを誘導できることから新規治療分子としての利用が検討されている一方、細胞質移行量は極めて低く、活性が制限されている。本研究では、抗体の細胞質移行を促進するため、ポリフェノール高分子を基盤とした薬物送達システムを構築した。合成したポリフェノール導入高分子と金属イオンを抗体と混合することで抗体複合体が形成されることを見出し、この複合体は細胞実験および動物実験において抗体の細胞質移行性を向上させた。さらに、がん治療用抗体複合体をマウスに投与すると、がんの増殖を治療用抗体単体と比較して優位に抑制した。本抗体複合体は新たな治療分子としてのポテンシャルを示した。
細胞内抗体は細胞質内抗原と結合し、細胞死など誘導すること新規治療分子としての利用が検討されている一方、細胞質移行量は極めて低く、活性が制限されており、医薬品としての検討がほとんど行われていなかった。本研究では、ポリフェノール高分子を基盤とした薬物送達システムによって細胞内抗体の細胞質移行を促進させ、治療効果を示すことに成功した。本技術は、細胞内抗体の医薬品としての有用性を向上させるものであり、新たな医薬品を創出するプラットフォーム技術になる可能性があり、社会的意義が大きい。また、ポリフェノール分子と金属イオンの緩衝効果を利用した薬物送達システムは報告されておらず、学術的にも意義があるといえる。
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Cancer Science
巻: 113 号: 12 ページ: 4339-4349
10.1111/cas.15554