研究課題/領域番号 |
21K20569
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0601:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川出 野絵 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (20910574)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / グリア細胞 / 肥満 / 脂質代謝 / 脳・全身連関 |
研究開始時の研究の概要 |
肥満の頻度が高い糖尿病患者では認知症発症リスクが高く、また、肥満のヒトでは脳が萎縮していることが指摘されている。脳萎縮の要因の一つは脱ミエリン化だが、ミエリンはその組成の大半が脂質である。これらの知見より、肥満時には末梢組織由来分子が脳に作用することで脂質代謝系が変化し、認知症発症や病態悪化に繋がると推察した。本研究ではアルツハイマー病モデルマウスを用いてこれらを検証する。特に、アルツハイマー病の病態への関与が近年になって注目されているグリア細胞に着目する。
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研究実績の概要 |
肥満時には認知症発症リスクが高く、また、肥満のヒトでは脳の白質容量が減少していることが報告されている。白質はミエリンが多くを占め、その組成の大半は脂質である。したがって、認知症の発症やその病態悪化には脳の脂質代謝系の変動が関与しているのではないかと仮説を立てた。本研究では認知症の代表的な疾患であるアルツハイマー病(AD)のモデルマウス(AppNL-G-F)を用いて、本仮説を検証する。 昨年度の解析では、AD発症期である8ヶ月齢のADマウスに通常食を摂取させた際に、大脳皮質において脂肪酸代謝や脂質取り込み、リン脂質代謝に関与する遺伝子の発現が変動し、また、肝臓や白色脂肪組織でも脂質代謝系の遺伝子発現が変動していることを見出した。今年度は高脂肪食(HFD)を摂取させて慢性的に過栄養状態としたADマウスを用いて評価した。HFD摂取により、大脳皮質ではリン脂質代謝や脂肪滴形成に関与する遺伝子の発現が変動していた一方で、これらの遺伝子発現は野生型(WT)マウスとADマウスで差がなかった。現在、ミエリンを産生するオリゴデンドロサイトを脳より単離し、遺伝子発現解析を実施している。 肝臓では、HFD摂取による総コレステロール量の上昇が、ADマウスでより顕著だった。また、白色脂肪組織重量はWTマウスとADマウスで異なり、HFD摂取によるトリグリセリド分解系遺伝子の発現変動がADマウスでより顕著だった。これらより、ADマウスの末梢代謝組織では脂質代謝系が変動している可能性が考えられた。 今後、脳はオリゴデンドロサイトでの脂質代謝系について、末梢組織は肝臓や白色脂肪組織の脂質代謝系と炎症系について、さらに解析を進めて、末梢組織での変化がAD脳へ影響する機構について手がかりを得る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ADマウスへのHFD摂取期間は6ヶ月間と設定したが、マウスの確保や飼育条件の検討に時間を要したため投与開始時期が遅れ、サンプル取得時期が遅延した。現在、HFD摂取ADマウスの解析途中であり、今後も進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ADマウスの大脳皮質では脂肪酸代謝や脂質取り込み、リン脂質代謝が変動していることが示唆されているため、特にこれらに着目して解析する。現在、HFD摂取ADマウスの脳より単離したオリゴデンドロサイトの遺伝子発現解析が進行中である。また、これまでに、ADマウスの肝臓や白色脂肪組織では脂質代謝系が変動していることが示唆されており、HFD摂取に対する応答が異なることが推察された。HFD摂取ADマウスでは末梢代謝組織での脂質代謝系や炎症系が変動している可能性があるが、これらの詳細な機構と脳での病態変化との関連性について手がかりを得る。
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