研究課題/領域番号 |
21K20590
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0603:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井ノ口 繭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90778549)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 軟骨魚類 / 浸透圧調節 / 環境適応 / 塩類細胞 / 胚 / 軟骨魚 / トラザメ |
研究開始時の研究の概要 |
硬骨魚では鰓の塩類細胞が体液のイオンを調節しており、そのメカニズムは解明されつつある。一方、軟骨魚類の鰓にも塩類細胞が多数存在することが確認されているが、その役割はについては不明な点が多い。本研究では、申請者が発見したトラザメ胚に発達する鰓の塩類細胞集団に着目する。まず、この細胞集団の構造を明らかにした後、塩類細胞集団を切り出すことで細胞レベルでの遺伝子解析を行う。また、胚のサイズが小さいことを利用し、塩分濃度・pHが異なる環境で飼育実験を行うことで塩類細胞集団の機能を解析する。これにより、これまで成魚を用いた塩類細胞研究では明らかにできなかった軟骨魚類の環境適応機構の解明を目指す。
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研究成果の概要 |
本研究ではトラザメ胚の塩類細胞に着目することで、軟骨魚の浸透圧調節機構の発達過程を検証した。まず、トラザメ胚での鰓の塩類細胞の分布を観察したところ、ステージ31から鰓弁上に単体の塩類細胞が存在し、体表や卵黄嚢上皮にも塩類細胞が分布した。ステージ32からは鰓隔膜に塩類細胞の集団構造が出現し、その細胞集団はtype Aの塩類細胞に似たイオン輸送体の局在を示した。また、3次元構造解析により、濾胞状の塩類細胞集団は鰓隔膜の頭部側にのみ局在する様子が観察された。この分布は、浸透圧調節器官が未発達な孵化前のトラザメが効率的に体液調節を行うのに役立っていると考えられた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
世界のサメ類の漁獲量は増加の一途をたどり、その水揚げ量は現在では1950年の約3倍を示す。発生・成熟に多くの年数を要するサメ類が過剰な漁獲から受ける影響は大きく、資源量の回復は容易ではない。このように海洋生態系の頂点に立つ捕食者の個体数変動は、食物連鎖を通して生態系全体に大規模な変化をもたらすことが危惧される。軟骨魚の環境適応機構を解明する本研究は、環境変動が海洋生態系に及ぼす影響を評価すると共に生態系維持への解決策を提唱する重要な研究になることが期待される。
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