研究課題/領域番号 |
21K20614
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0605:獣医学、畜産学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 洋介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (50912549)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 犬 / 悪性黒色腫 / 転移 / 悪性腫瘍 / ROCK / 腫瘍 / ポドプラニン / Rho kinase / 分子標的薬 / Rho-associated kinase |
研究開始時の研究の概要 |
犬悪性黒色腫は極めて転移性が高く、効果的な全身療法がないため、外科手術で病変を切除しても、その後、転移し、予後は1年前後と短い。申請者は、犬悪性黒色腫の予後と関連する分子として、ポドプラニン (PDPN)を同定し、その下流シグナルであるRho-associated kinase(ROCK)の阻害薬により、細胞株の増殖・運動能が低下することを発見した。さらに、ROCK阻害薬には既存薬が存在することから、ドラッグリポジッショニングできることを着想した。本研究では、それらの知見に基づき、ROCKを標的とした犬悪性黒色腫に対する新規全身療法の検証を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が同定した犬悪性黒色腫の新規治療標的である「PDPN-ROCKシグナル」の阻害による新たな全身療法の確立を目指した前臨床研究を行う。 本年度は、PDPNをCRISPR/Cas9法にて欠損させた犬悪性黒色腫細胞株2株(ノックアウト株)および親株のmRNAシークエンスを実施し、PDPN-ROCKシグナルに起因する遺伝子発現変動を検証した。その結果、昨年度のin vitro assayにて明らかになった移動、浸潤、増殖に関連した遺伝子変動を認め、in vitro assayとの結果の一致を確認した。さらに、間葉-アメーバ転換に関連する遺伝子の発現変動を認めた。そこで、PDPN-ROCKシグナルと間葉-アメーバ転換の関連について、in vitro assayにて追加の評価を行なった。その結果、ノックアウト株では細胞形態の球体化指数の低下や細胞質突起の消失などを認め、アメーバ様の形態を示す親株に比べ間葉様の形態へと変化していた。つまり、PDPN-ROCKシグナルは犬悪性黒色腫において間葉-アメーバ転換を促進し、アメーバ様細胞による浸潤転移を促進していることが示唆された。また、ROCK阻害剤のin vitro添加によりノックアウト細胞株で観察された現象を再現できることもわかった。 さらに、犬および人の粘膜由来悪性黒色腫症例検体のmRNAシークエンス公共データを用いて、PDPN-ROCKシグナルと間葉-アメーバ転換に関連した遺伝子群の発現変動を解析した。その結果、犬悪性黒色腫症例検体mRNAシークエンスデータにおいても、細胞株を用いた検証と同様に、PDPN-ROCKシグナルによる間葉-アメーバ転換の誘導を示唆するデータが得られた。これらの機序は人の粘膜型悪性黒色腫にも共通して見出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はPDPNノックアウト細胞株のmRNAシークエンスや人と犬の悪性黒色腫症例のmRNAシークエンス公共データの解析を行い、PDPN-ROCKシグナルと間葉-アメーバ転換が関連しており、さらに、これらの機序は人悪性黒色腫においても共通している可能性があるという当初の予想を上回る大きな発見が得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、in vitro検証やin silico検証により得られた機序について、マウスin vivoモデルでの検証を進める。
|