研究課題/領域番号 |
21K20617
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0605:獣医学、畜産学およびその関連分野
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
増田 豊 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (80514728)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ゲノミック選抜 / 育種予測価 / 不完全な血統 / 予測モデル / 量的遺伝学 / 予測育種価 / 血縁関係 |
研究開始時の研究の概要 |
家畜の育種選抜では、高密度DNAマーカーに基づくゲノミック選抜法が実用化されている。その一手法であるシングル・ステップ法は、DNAマーカーと、血統表から構築した近縁関係を結び付け、個体の遺伝的素質(育種価)を予測し、家畜の正確な選抜を目的とした統計的手法である。血統が不完全でも、血統表の空欄に仮親を割り当てれば近縁関係を補完できるが、予測に用いるデータ構造と、予測方程式の組み合わせによって、育種価の予測値とその年次推移(遺伝的トレンド)の推定値にバイアスが生じることがある。本研究では、データ構造の違いがどのように予測バイアスを生じさせるかを解明し、バイアスを最小化する方程式を特定する。
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研究実績の概要 |
シングルステップ法は、観測データ、血縁関係、ゲノム情報を結びつけることで個々の育種価を予測し、特に情報量の少ない若齢個体の選抜の正確度を向上させるゲノミック選抜手法である。血縁情報はしばしば欠損するため、血統表の不明親に「仮親」を割り当て、育種価予測値の偏りを軽減するモデルが提案されている。本研究の目的は、血縁関係に欠損がある場合に、情報量の欠落に応じて育種価予測値がどのように偏るかを調査し、偏りの少ない最適な仮親モデルを提案することを目指す。以下、本年度の進捗をシミュレーションデータの解析、実データの解析、および脱回帰(de-regression)法による実用度の検討に分けて記す。 シミュレーションデータの解析にあたり、データを生成するコンピュータプログラムの改修を行った。このプログラムは、乳用牛の繁殖構造を模した集団を想定し、表現型値と血縁関係のほか、各個体の一塩基多型(SNP)を含むゲノム情報を生成した。データ生成後に母方の血縁情報を欠損させた。いくつかの欠損のパターンを試験した。育種価の予測にはシングルステップ法を採用した。結果は、昨年の血縁のみを含むデータと類似した。すなわち、仮親を含めると、遺伝的トレンドは真値に近づいたが、仮親のもつ個体数が十分ではない場合にはバイアスを除去できなかった。 実データの解析においては、モデルの違いは、遺伝的トレンドの違いに大きなインパクトを及ぼさなかった。しかしながら、分析に用いるゲノム情報が比較的少ないとき、特定の仮親モデルでは育種価の予測が不安定となった。 本研究では、シングルステップ法における脱回帰の方法を新たに提案し、そのためのコンピュータソフトウエアも開発した。脱回帰にかかる時間は、12万頭分のゲノム情報を用いても2分程度であり、十分に実用的とみなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では、2022年度中にシミュレーションによる論理的検討および実データにおける実証的研究を完了する予定であった。シミュレーションプログラムの改修は完了したが、その生成したデータに基づく解析を行い結果を得た。しかし、プログラムの一部(ゲノム情報の生成部分およびゲノム選抜の実施部分)に問題が見つかり、これを修正した上で、全体を再解析する必要が生じた。現在、プログラムの再改修を行っている。実データを用いた検証に関して、特定の仮親モデルで育種価予測が不安定となるケースがあった。現在、いくつかの再分析を計画し、その原因を考察する予定である。脱回帰法については方法論を開発することができた。この方法の有用性を実データで判定する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、妥当なゲノム情報を生成し、集団内で適切なゲノム選抜が実行されるようにシミュレーションプログラムを再改修する。実データにおける解析については、安定して育種価が推定できるようにモデルを構築する。さらに、脱回帰法の検証を、実データを用いて行う。
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