研究課題/領域番号 |
21K20672
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0703:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野添 嵩 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30910533)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 1細胞計測 / 細胞系譜 / 表現型ゆらぎ / 個体群動態 / 有限集団 / 集団動態 / 系譜解析 / 変動環境 |
研究開始時の研究の概要 |
近年進展する顕微鏡タイムラプスによる1細胞計測技術は細胞の成長動態を1細胞レベルで定量し、何世代にも渡る細胞時系列を実験で取得することは標準的な技術になりつつある。定常環境下での世代時間ゆらぎと集団の増殖の関係は理論的に確立しており実験的にも検証可能であるが、生物学的、生態学的に興味深い時間変動する環境下での両者の関係性について、実験検証可能なレベルでの理解は不十分である。そこで本研究では、実験検証可能な細胞系譜解析理論の構築とともに、新規に取得する実験データを用いた理論検証を行う。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き有限集団の定常データに適用可能な既存の手法の妥当性及び限界を確認するための数値シミュレーションと実験データにへの適用を行ったことに加え、本年度は定常性の低い既存の実験データの解析を行った。 まず従来の細胞系譜解析手法が環境の定常性を前提とせず適用できることに着目し、集団として増殖が静止した状態から採取された細胞が指数関数的に増殖するようになる過程という定常性の低い細胞系譜を定常性の高い細胞系譜と比較した。新たに導入された2種類の選択強度は、定常性の高い環境ではほぼ同じ値をとる傾向を示す一方で、定常性の低い細胞系譜ではその傾向から大きく外れることがわかった。以上の成果は本年度出版された論文で報告している。さらに、この論文では世代時間がゆらぐ増殖モデルでの理論計算も行っており、この結果も本研究を進める上で重要な指針となる。 次に細胞の排除や死亡を含む個体群動態において細胞の定量的形質の違いによる選択がどの程度起きるのかを定量的に評価する方法を考案した。この手法は細胞の排除や死亡が起こらない細胞系譜を対象とした従来の解析の枠組みの拡張となっている。成長を持続する細菌集団に対し致死濃度の抗生物質を投与する中での生き死にを追跡した細胞系譜を対象とした解析や、増えた細胞を排除しながら一定数の細胞集団を維持するような増殖系の実験データを対象にした解析を行い、本手法の実験データへ適用可能性を評価した(海外共同研究者との共著論文として投稿中)。 以上の成果は次年度実施する予定の変動環境下における増殖する細胞集団の実験データを解析する上で有用であることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は共同研究の機会を得て細胞の排除や死亡を含む細胞系譜の解析手法について大きな進展が見られた一方で今年度の目標であった環境変動実験の実施に至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
変動環境下の有限集団の長期計測実験を実施する。 これまで進めてきた非定常環境下の集団動態に関する理論的な知見について整理し公開することを目指す。
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