研究課題
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癌組織内の癌細胞には代謝不均一性が存在し、癌治療の大きな障壁となっている。しかし、癌細胞の代謝不均一性がどのようにして獲得されるのか、癌細胞の代謝不均一性が治療薬抵抗性にどのような関与をしているのか、等の重要な問題はほとんど未解決のままに残されている。本研究は、ALDH1陽性癌幹細胞の非対称分裂を切り口に癌細胞の代謝不均一性が獲得される仕組みを明らかにするとともに、癌幹細胞マーカー遺伝子ALDH1A3の追跡により癌幹細胞の非対称分裂を介した癌細胞の代謝不均一性獲得過程を明らかにする。
本研究では、ALDH1陽性癌幹細胞の非対称分裂による解糖系能の不均一性獲得の一端を明らかにした。具体的には、ALDH1A3遺伝子の改変により、乳癌細胞株でALDH1A3発現を追跡するためのクローンを作製し、解析した。その結果、乳癌幹細胞が非対称分裂を介して解糖系能が高い癌幹細胞を維持しながら、解糖系能の低い非癌幹細胞を新たに生みだすことが示唆された。さらに、膵臓癌細胞株でもALDH1陽性癌幹細胞の非対称分裂を見出し、乳癌に限らず他の癌種でも同様の仕組みによって不均一性が獲得される可能性を示した。
本研究は、癌治療において克服すべき重要な課題である癌細胞の代謝不均一性がどのように獲得されるのか、その仕組みの一端を明らかにした。特に、癌幹細胞の非対称分裂制御が代謝不均一性の獲得過程に重要な役割を果たしていることを示した。これにより、遺伝子変異の蓄積に差がない細胞集団からなる癌であっても、異なる性質を持つ癌細胞が生まれる仕組みに関する新たな知見を提供した。これらの知見は、癌の治療抵抗性を克服するための新しいアプローチの開発につながる可能性がある。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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