研究課題/領域番号 |
21K20763
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0803:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岩永 直樹 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40912499)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 薬剤耐性緑膿菌 / 人工呼吸器関連肺炎 / IL-22 / 多剤耐性緑膿菌 |
研究開始時の研究の概要 |
多剤耐性菌は主に院内肺炎、特に人工呼吸器関連肺炎の原因として多く、有効な治療法が確立されておらず、死亡率も高い。繰り返す抗菌薬を必要とする症例などでは、耐性緑膿菌が持続的に感染症を起こすことも少なくない。一方で、Type17サイトカイン (IL-17、IL-22) は上下気道や腸管の粘膜免疫で重要な役割を担っており、IL-22は抗菌ペプチドの産生や組織の修復 、更にはタイトジャンクションの増強等、粘膜免疫において不可欠なものである。多剤耐性緑膿菌による人工呼吸器関連肺炎のマウスモデルを用いて、病態の更なる解明を進めると共に、IL-22:Fcの有効性について検討する。
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研究実績の概要 |
IL-22は細菌感染に対して抗菌ペプチドや補体の産生促進、組織の再生やタイトジャンクションの強化を通して抗微生物効果を発揮する。ヒトIL-22とヒトIgG2-Fcのfusion proteinであるrecombinant IL-22:Fcは、長い血中半減期と高い肺への浸透性を特徴とするが、薬剤耐性緑膿菌による人工呼吸器関連肺炎への効果について未だ報告はないため、マウスによる人工呼吸器関連肺炎モデルを作成し、その治療効果について検証した。 耐性緑膿菌によるVAPモデル確立に際し、気管内に約3mmのチューブを留置する技術の習得に予想に比べて難渋し、緑膿菌は適度に肺炎を起こす菌量のrangeが極めて狭いため、至適菌量の設定に多くの時間を要した。最終的に、BALB/cマウス(8週齢、オス)に、3mmの栄養チューブを気管内に留置し、多剤耐性緑膿菌の臨床分離株(1126)5×10^6 CFUを気管内投与することでモデルを確立した。感染4時間前に、polyclonal IgG2或いはIL-22:Fc 5μgをそれぞれ腹腔内投与したところ、感染4時間前のIL22:Fc投与群はコントロール群と比較し生存率の改善を認めた(log rank test, p=0.039)。さらに感染24時間後の肺内生菌数はIL22:Fc群で有意に低下し(Mann-Whitney U test, p=0.0093)、肺組織のreal time RT-PCRにより、TnfαやIfnγ発現の低下傾向がみられた。更に感染3時間後に治療したところ、IL22:Fc投与群でも肺内生菌数の抑制効果を認めた(Mann-Whitney U test, p=0.0043)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも述べたように、モデルの確立に想定以上の時間を要した。モデル確立後は安定してデータが出るようになり、最終的な機序の確認まで行って研究をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
治療群における炎症性サイトカインのdown-regulationを認めているため、今後、肺内炎症細胞の評価のため、肺のDigestion検体をflow cytometryで評価する。また肺組織をH&E染色で比較する。最終的に感染12時間後 (菌量によるバイアスがかからないように、両群のCFUに差がないことを確認する) の肺検体を用いてunbiased Bulk RNA sequencingを行い、RNAの発現を網羅的に解析する。最終的に、抗IL-22抗体の腹腔内投与群で、病態の悪化を認めるかも検討する。
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