研究課題
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アルテミシニンは熱帯熱マラリア治療の中心として使用される薬剤だが、東南アジアを中心として耐性原虫の拡散が問題となっている。最近になってアフリカでも耐性原虫の出現が確認されており、その原因の解明が急務である。ウガンダ共和国において、我々はアジアで流行しているものとは別の遺伝子変異を有する耐性原虫を発見した。これがアフリカ型アルテミシニン耐性の原因であることを証明するため、遺伝子組み換え原虫を作出し薬剤感受性試験を行う。
我々はウガンダ共和国北部でKelch13 C469Y変異およびA675V変異を有するアルテミシニン耐性熱帯熱マラリア原虫を発見し、これらの変異が臨床的耐性と関連することを示した。本研究は変異原虫の表現型を培養系で確認することを目的として開始した。しかしゲノム編集によって同変異を導入した標準培養株は明確なアルテミシニン耐性を示さず、何らかのバックグラウンド変異が耐性獲得に必要であると考えられた。そこでフィールド由来耐性株のゲノムを解析し、新たな変異XがA675V変異と同時に入ることで有意に耐性度が高まることが分かった。ゲノム編集により変異Xを導入した原虫を作製し、表現型解析を進めている。
アルテミシニンは現時点で熱帯熱マラリアに対する第一選択薬である。本薬剤の導入により世界のマラリアコントロールは著しく進歩したが、近年アルテミシニン耐性原虫が急速に増加しており、治療失敗や患者の増加がみられている。2021年時点ですでに年間2億人以上がマラリアに罹患し、うち60万人以上が死亡するという莫大な社会的損失が生じている。本研究はマラリアの被害が最も大きいアフリカで新たに出現したアルテミシニン耐性の機序を明らかにするものであり、耐性遺伝子マーカーとしての利用や、耐性原虫に対する新規治療の開発、耐性原虫が集団内で増加する機序の解明と公衆衛生戦略の立案など、様々な応用が期待される。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 オープンアクセス 6件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/kiseityu/achievements.html