研究課題/領域番号 |
21K20773
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0803:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡部 哲也 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (10912496)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | プロスタグランジン / FRETバイオセンサー / 細胞間相互作用 / 細胞間シグナル伝達 / PKA / 光遺伝学 / イメージング / FRET |
研究開始時の研究の概要 |
プロスタグランジンE2(PGE2)は、免疫応答の抑制や癌浸潤促進作用があることが知られている。しかし、このPGE2がいつ・どの細胞から・どれだけ放出されるのかについては未解明な点が多い。申請者は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーを用いて、PGE2の時空間的放出動態を可視化するライブイメージング系を世界に先駆けて開発した。この系を用いて、いつ・どの細胞から・どれくらいPGE2が放出されるのかを可視化し、PGE2が関わる細胞間相互作用の数理的な理解を目指す。
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研究実績の概要 |
プロスタグランジンE2 (PGE2) は、免疫応答調節や血管透過性亢進、粘膜恒常性維持など、幅広い機能を有する脂質メディエータの1種である。本研究では、このPGE2 に着目し、1細胞のレベルでの放出動態を可視化・定量することで、PGE2シグナルの数理的な理解を目的とした。 PGE2の放出動態を可視化するため、PGE2の下流で活性化されるプロテインキナーゼA(PKA)活性を代理マーカーとした。PKA活性を反映するFRETバイオセンサーを恒常発現する細胞株やトランスジェニックマウスを用いることで、PGE2放出をPKAの同心円状活性化として可視化することに成功した。 PGE2の合成には、細胞質ホスホリパーゼA2 (cPLA2)のカルシウムによる活性化がトリガーとなることが知られている。カルシウムとPKA活性の同時イメージングにより、カルシウム上昇が起こった細胞のうち、PGE2放出に至る細胞は高々5%程度であることや、分裂期の細胞では、カルシウム上昇が起こってもPGE2放出が一切見られないことを突き止めた。さらに、光遺伝学ツールを用いて細胞内カルシウム濃度を操作し、PGE2放出を引き起こすカルシウム濃度には閾値が存在すること、またその閾値は細胞間で異なることを見出した。 PGE2放出に伴うPKA活性化の伝達距離は、細胞間で10倍程度異なっていた。ここから1細胞レベルでのPGE2放出量を探るべく、PKA活性の伝搬距離と、PGE2放出のシミュレーションを組み合わせて推定したところ、PGE2放出量が細胞間で100倍近く異なることを見出した。 本研究は、生体内におけるPGE2を介した細胞間相互作用の理解に寄与するものと考えられる。
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