研究課題
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超高線量率照射法(FLASH)は、有害事象を軽減することから、従来の線量限界を超えた処方線量をがんに照射できる可能性が期待されている。その生物学的メカニズムとして酸素枯渇仮説(Oxygen depletion hypothesis; ODH)が提唱され、根治照射応用に向けて、in vivoにおけるエビデンスの構築が求められている。そこで、本研究では、FLASH照射後の担癌マウスにおけるDNA酸化損傷の腫瘍限局性について質量顕微鏡を用いて検証する。これにより、FLASHがなぜ抗腫瘍効果を落とさずに有害事象を低減できるかの機序解明につながることが期待される。
FLASHの提唱後、従来よりも短時間での放射線照射後の生体反応について評価する必要性が出てきた。今年度は従来の線量率における生体反応評価を行った結果を論文として発表した。時間としては照射後5分以内の評価を試みた。時間的な面を考慮し、対象は脂質とし、液体クロマトグラフィー質量分析により計測を行った。脂質は二重結合を有する分子が多く存在するため放射線によるラジカルとの反応性が高いことが知られており、多くの酸化脂質が検出されることが予想された。しかし、結果として、不飽和脂肪酸を複数含んだ脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)を側鎖として有する脂質が増加した。5分という短時間では脂質合成は不可能であることから、遊離脂肪酸を原料とした合成経路が想定された。実際に、遊離脂肪酸の量を調べたところ減少が見られ、Lands cycleによる生体反応である可能性が考えられた。FLASH照射実験については、現在FLASHの臨床試験を行っているVarianとFLASHを提唱したフランスのキュリー研究所との共同研究を開始した。VarianからはFLASHサンプルが送付されることが決定しており、キュリー研究所のFLASHサンプルはヒトのサンプルであることから現在契約等の手続きを進めているところである。
3: やや遅れている
アメリカ企業Varian、フランスの学術機関キュリー研究所との契約に時間を要した。海外の研究機関であるため、サンプルの輸送などの際しての制約はあるものの、FLASHの臨床試験を進めているVarianや、FLASH研究のパイオニアチームであるキュリー研究所との共同研究を行える意義は大きいと考える。
VarianからはFLASHサンプルが送付されることが決定したため、その解析を進めたい。キュリー研究所との秘密保持契約を締結したので、FLASH実験を加速させたい。キュリー研究所のFLASHチームは正常組織の評価を行っているため、癌モデルについては現地に出向き実験を行う予定である。また、本学でもFLASH照射装置を導入すれば制限がなくなるため、そちらの申請も進めているところである。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Int J Mol Sci.
巻: 24 号: 15 ページ: 12439-12439
10.3390/ijms241512439
PLoS One
巻: 18 号: 5 ページ: e0283155-e0283155
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https://institut-curie.org/personne/charles-fouillade