研究課題
研究活動スタート支援
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界的に患者や死亡者も多い健康上の脅威であるが、根本的な治療法が確立されていない。我々のこれまでの研究でCOPDの病態進行にCCL17/TARCというケモカインが関与していることが示された。本研究ではCCL17/TARCとその受容体であるCCR4に着目し、これらの機能がCOPDの病態進展にどのように関係しているかを検討する研究を計画した。本研究によりCOPDの病態を解明し、新規治療法の解明に結びつくことが期待される。
ケモカイン受容体CCR4ノックアウトマウスに対し、2日間の短期間喫煙曝露を行った。気管支肺胞洗浄(BAL)を施行し、細胞数および分画の評価を行ったところ、対照マウスでは喫煙曝露後のBAL中総細胞数およびマクロファージ分画の増加を認めたが、遺伝子改変マウスではその増加が有意に抑制されていた。さらに同マウスに対し、6か月間の長期間喫煙曝露を行い、組織学的な検討を行った。結果、肺気腫の定量的な評価指標である平均肺胞間距離(Mean linear intercept; MLI)は遺伝子改変マウス群で有意に低下しており、遺伝子改変マウスでは肺気腫形成が抑制されていることが示された。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界の死因の上位を占め、呼吸機能低下による身体活動の低下は健康寿命を損なう大きな原因となる重要な疾患である。COPDは主に喫煙を原因として発症するが、喫煙者の一部にのみ発症するため何らかの喫煙感受性の存在が指摘されている。本研究により喫煙による肺組織の炎症や肺気腫形成にCCR4が関わっていることを示し、本因子がCOPD発症の病態形成に大きな役割を持つ可能性があることを示唆した。現在COPDの発症を予防したり根治したりする方法は存在しないため、本研究は将来COPDの治療や発症予防に対し、創薬を期待することができる大変意義深いものである。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology
巻: 66 号: 4 ページ: 428-438
10.1165/rcmb.2021-0069oc
Scientific Reports
巻: 12 号: 1 ページ: 12968-12968
10.1038/s41598-022-16767-2
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis.
巻: 16 ページ: 739-749
10.2147/copd.s287492