研究課題
研究活動スタート支援
急性腎障害は、様々な原因により発症し生命予後に関わる病態であるにも関わらず、未だ確立した治療法のない疾患群である。早期発見・治療介入が望まれる中、動物モデルでは迷走神経刺激が急性腎障害を軽減させることがわかっている。これは神経を介した免疫系制御機構のひとつとして知られるコリン作動性抗炎症経路(CAP)が活性化され抗炎症作用を発揮するためと考えられているが、どのように腎障害が軽減されるかに関する機序は明らかではない。本研究では、CAPの中心的役割を担うマクロファージや、それらが発現しているアセチルコリン受容体に着目し、腎障害軽減のメカニズム解明を目指す。
本研究にて,申請者は急性腎障害に対するアセチルコリン受容体刺激の臓器保護作用について検証した.迷走神経刺激,コリン作動性抗炎症経路による腎臓保護効果に着目し,マクロファージ特異的α7ニコチン性アセチルコリン受容体ノックアウトマウスを用いて生体内におけるα7ニコチン性アセチルコリン受容体陽性マクロファージが不可欠であることを実証した.さらに,シングルセルRNA-seqによる網羅的解析を行い,アセチルコリン刺激はマクロファージ-マクロファージ相互作用を誘導し抗炎症・臓器保護効果をもたらすことを明らかにした.
急性腎障害は,様々な原因により発症し生命予後に関わりうる重篤な病態であるにも関わらず,確立した治療法はなくその治療は対症療法にとどまる.関節リウマチや炎症性腸疾患などへの臨床応用が期待されている迷走神経刺激が,急性腎障害を軽減するということが動物モデルでは立証されつつあるものの,その詳細なメカニズムは未だ明らかではない.本研究にて,アセチルコリン刺激の受取手としてのマクロファージの重要性やアセチルコリン刺激がマクロファージ同士の細胞間相互作用が誘導することを見出した.これらは急性腎障害のメカニズム解明や神経系を介した臓器保護作用メカニズムの解明に新たな見解を与えることができたと考える.
すべて 2023 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) 図書 (3件) 備考 (1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 665 ページ: 187-194
10.1016/j.bbrc.2023.04.118
Brain, Behavior, and Immunity
巻: 111 ページ: 138-150
10.1016/j.bbi.2023.04.003
Frontiers in Medicine
巻: 9 ページ: 993698-993698
10.3389/fmed.2022.993698
巻: 590 ページ: 89-96
10.1016/j.bbrc.2021.12.094
http://physiology1.moon.bindcloud.jp/publication.html